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Destiny-10


ナルトの居ない部屋に戻る。


ナルトの服にナルトの使っていた揃いの器
カップ…


さっきまでいたナルトの残像が脳裏に渡る。

俺とナルトの幸せだった数週間を何にも勝る思い出にはしたくなかった…


ナルトは帰ってくると
どこかで信じていた。

持たない筈だったが予想外にも延命した事態。ナルトの芯の強さから俺も学んだのだろうか。
強い、絶対という信念がナルトを望んでいた。


「…信じるくらいは、いいだろう?」



『さよなら』は言わなかったナルト。

俺も手は振らずにいた。


「また会える必ず……」



独りごちり、
知らずの間にナルトの荷物を整理していたのは矛盾していた。

しかし止めようとは思わなかった。


そうした時に交換日記と書かれたノートを発見して開く。



一緒に暮らしてから一日も欠かさずとした目標で綴られた十数枚の全てのページは
対面左側だけに書かれていた。

右側の余白ページは
俺の分だろう……


隠し持ってた日記になんざ書き込める訳はない。
気がつかなきゃ……

いや、気がついたとしても日々の労働で疲れていた俺は恐らく……


ナルトは分かってたからこそ、わざと隠し持っていた。
そうさせたのは俺だ。

そう念頭においてナルトの書いた文字を眺める。




〇月〇日

サスケと町を出て
自由を感じて嬉しかった。あんま持たないだろーけどサスケとずっと毎日いられる。



スケベなサスケと毎晩一緒に寝るのはちっと心配だけど…


サスケと一緒に布団で寝られるコトを考えるとワクワクする。

大好きなサスケの温もりを感じられるなんて幸せ過ぎるよな!



その間に沢山の人が苦しい思いをして死んじゃうのはやだけど…

オレはもう誰も殺したくはないんだ。


…ごめん。
少しだけのわがままを許して下さい

…ごめん。





次も…また次も…
相変わらず最後には『ごめん』か。
あいつらしいと頬が緩む。


ナルトは自分がココから離れたら俺には
あの町に帰って欲しいと何日かに渡って綴っていた。

理由は
学校に行ってほしい
からだった。


何故ナルトがそうまでしてまで学校に拘るのかは解らないが、授業をまだしてるならナルトの遺志を通そうと誓う。





俺は食う気になれない飯も食わずに
短くてもいいからと
空白のページを埋めるように文字を綴った。





まともに交換日記と呼べるのは、これが最初で最後だからとかじゃなく、ましてや義務でもなく、
俺は書きたくて思った以上に文字を綴っていた。

ナルトの目には触れない事を知っていながら。










眠り就き
朝になり
飯を食った後

纏めた荷物を持ち部屋を出る。







ナルトと出会い過ごした学校へ通うために…
















道を歩いている途中途中、通り過ぎた一台のワゴン車が数メートル先に停まり、そして声をかけられる。


「何処まで行くんだい?よかったら乗ってきなよ。」


何故声をかけられたかは人が減ったから…などと解釈し、行き先も同じだという事もあり折角の好意にと甘えワゴン車に乗る。
小学生くらいの女の子が隣りへと招き、座る

「あたし、セナ!、お兄ちゃんは?」

「サスケだよ。」


「ねェねェ、好きな食べ物は?」


「…トマ‥いや、おむすびだ。」

たかがガキの質問に
ムキになったかに訂正を加え、ナルトの握った…――なんて心の中で呟いてみる。


「セナはね〜、美味しいのなら何でもなんだ〜。そうだお兄ちゃん好きな人いる?」


「…あ、…ああ。」

ナルト…だと口にしたところで如何しようもないが居ると言う事は漏らし、ガキ相手に何素直に答えてんだか……と言った後に溜息を吐く。

「お兄ちゃんはイケメンだからモテそーだもんね!」


「………。」

最近のガキは
みんなこんな風な口を叩くのか…

「あのね、セナもいるんだよ!好きな人!ナルトくんっていうの」


「…!!」

こいつら家族は
もしかしたらナルトの知り合い……


「ナルトを知ってるのか?」


「うん!有名だよ!セナ、ナルトくんのォ‥お顔はわかんないけど」


「どういう事だ?」


「ジエータイに勤めてる伯父ちゃんが言ってたんけど、すっごく強いお兄ちゃんがいるんだって!その強いお兄ちゃんのおかげで平和な町があるって!」

付け加えるかに助手席に乗ったセナと名乗るガキの母親が喋りだす。


「そうなんですよ、私の兄が前々から戦争が酷くなったらナルトが守っている町に行けって言ってましてね。
ラジオでも言ってましたよ?『まだ平和であるナルトの町から流してる』とか。それでその町は有名になり人々が集まってるそうで…」


「ナルトが…守る町、だと?」


更に運転している父親が話を聞き返す。


「知らないのに何故ナルトの町に行くの?」


「…故郷の…町だからだ…」

「そうか、君はいい場所で産まれたんだね。」


敢えてナルトの名前は出さず、ナルトの町と呼ばれる…俺の故郷について語る親子の話に耳を傾け、嬉しくて溢れそうになった。



『ごめん‥』と謝ってばかりのナルトに聞かせかった。


ナルトが聞いたら…
どんなに喜ぶか。



そう思う傍ら
俺を守ると言ってたナルトの台詞が頭に過ぎった。










故郷に着いた頃には日が沈みかけていた。

たった二週間余りだったが、酷く久し振りに見たと感じる

そこの景色は自給自足を要したかに荒れ地を耕し……
諦めずとした人々の笑顔が広がっていた。

それが戦時中で生き抜く過酷さを知らせてくれた気がした。





俺も守るよ…
お前が守ってるやり方とは違うが、守りたい。この町を……





いつかまた会える空から、見ていて欲しい…


ほんの片隅でいいから残っていると信じて……



届けと願う。

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あきゅろす。
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