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love song-1


教室に入ると当然のように話題は戦争のことで持ち切りだった。


授業も必然と戦争の話題に向けられる。

何故
今更なのかはメディアから知らされず、謎は隠されたまま俺達一般人は受け入れるしかない立場に置かれていると認識する。



ナルトは恐らく詳細を知っているだろう。

なんたって関係者だからな…。


そんな事を考え肘をつき授業を受けている中、ナルトの方を見やる。
アイツも俺を見つめ二ィっと……


こんな一時が微笑ましく。
殺伐とした現実が方が夢のようだと錯覚する。







昼休みになり、
学食に行こうとするキバに母さんが拵えた弁当を渡す。
耳元で「食え」と普段より大きな声で伝えたのは聴覚をやられちまったから……


「いいのかよ?お前の飯ねーじゃん。」


「バーカ、サスケはナルトと……だからオメーにソレやるってんだろーよ。」

シカマルのデカい声はキバに聞こえるようにしたと解ってはいるが、教室内に響くのは流石に……だ。

「ナルト、アンタやるじゃない!」

サクラがナルトの背中を叩く。

「ナルトくん…頑張ったんだね‥」
ヒナタがナルトに声をかける。

「へへッ、まァなッ!」
照れて後髪を掻くナルトが席を立ち
弁当を二つ抱え俺にと足取り、教室を出る。



晴れた屋上にナルトの隣りに位置して座り寄り添いながら飯を食う。

「旨い…」


「よかった!オレさ味わかんねーから心配だったんだ。」



機械と共有する身体は味覚まで蝕んだのか……。



「……ナルト…」


「そーだ交換日記!
家帰ったら見てなっ!」


なら、
帰りに渡せばいいものを……何故…。



「…ああ、後で目ェ通しておく。それよりお前……――」

「サスケしか知らねーんだかんな!オレが最終兵器だってコト。
いいか、ぜってー黙ってろよ!?」


「誰が言うか…。
お前と俺との秘密をよ。」



「…秘密……。なんかいいなっ!二人だけの秘密ってさッ!」


「ったく、そういう問題じゃねーだろが……」



ピロピロ…と機械音が流れる俺の携帯とは全く別の単調なメロディ…



「携帯‥鳴ってんぞ」

「あッ!!」


ガサゴソとポケットをまさぐる手が携帯とは違う機体を包む。


「ざーんねんでしたァ!携帯じゃなくてポケベル〜。コレだったらドコに居ても連絡取れっからって支給されたんだ。だからホラ、ジエータイな迷彩カラー!!、可愛いだろ?」


自慢げにポケベルを見せる笑顔。
こいつはこの状況をどう思っているのか…
全くもって分からねェ。

「二人だけの秘密……、増やそっか?」


ナルトが俺の顔に近付く。


まさかココで……


あの入口の影に
誰か居んの気付かねーのかよ?


俺は構わねーが……





「スクランブル発信、こーやってこれから沢山あると思う。そんときに周りにバレねーようにしてサスケにだけは挨拶したいんだ。
だからさ、なんかオレ達の暗号みてーなの、考えてくんねーか?」



フッ……
秘密を増やすって
そういう事かよ。



「任務でいいだろ?」


「カワイクねーし、マンマじゃんか‥」


「発動…、発信…、出動…」



「何かやだ…」

「拉致、拘束……俺がしたい…」


「何だよ!マジメに考えろってば!」


「真面目に…なんだが……」


「拉致や拘束なんて犯罪みてーで暗ェだろ!?」


「仕事でいいだろ?」


「おしごと…いってきます…か。うん!何かカワイイかも!!」

何が可愛くて何が可愛くねーんだか……


「さて…っと。わりィけどサスケ、あそこにいるシカマルとキバとサクラちゃん達に見られたらヤバいから、下に連れてってな。」


ナルトは時間がないから此処から飛び立ちたいと告げた。

「…ああ、じゃあな。」

立ち上がるナルトが
敬礼をする。



「おしごと、いってきますってばよ。」








級友たちに睨みを効かし連中を追い払った後

噴射する響音が耳に流れた。

「行ってくる」と示すように…


空を見ると
朱色の小さな戦闘機が目に入る。


後方の機体にはCU-BIの文字。



伝説の魔物であり神と崇められる
金色の九尾が浮かびあがった。





一人、家に帰り
ナルトの日記を開く。
丸っこくて雑な文字の羅列……





━━━━━━━━━━
〇月×日

サスケに見られたくない姿を見られちまうなんてオレってホント、あいつの言うとーりドジ。


でもアイツが怪我しねーでよかった!


オレさ、わかるんだ。最終兵器だから。





サスケと別れた学校の帰り道、途中から記憶なくて……
何で最終兵器にされちまったか全然わかんなくて、起きたらジエータイん中で……



何だか戦争に参加してくれって、みんなに頼まれて初めて参加したのが今日だった。


まだよくわかんねーんだ、色々……。


ただ、わかってるのはオレしか出来ないコトなんだってのと、もう戦争は止めらんねーってコト。


世界の喧嘩が始まっちまって、みんな負けたくなくて…なんだろーな。


オレはこの国を守るために造られた。
選ばれたんだと。


こんなオレでも
役に立つんだなんて、張り切ってみたけど……オレらの被害にあった人たち、沢山いて……ごめんな気分。


だけど、やんなきゃ…みんな死んじまう。
死なせたかねーんだ!人も動物も……


でも、仕方ないみたい。



何でだろ?

何で争うんだろ?

何で敵になんだろ?



誰も悪くないのに……


何でオレ、こんな体になっちまったんだろ?



なんて弱音吐いてる場合じゃねーんだった。

オレさ!
強くなりてーんだ!
サスケよりも強く!!


最終兵器としてじゃなくて人間として!




だから、だからさ…


最初で最後に弁当とか作って、恋人らしいコトやってやる!






だから…

こんなフツーじゃないオレと別れて下さい。



━━━━━━━━━━





何だよ、何て一方的な奴なんだよ……お前。









俺の気持ちは無視かよ……

納得いかない。











「クソッ!!」



戦争の動向よりも
ナルトの心境の方が気になるほど……俺はナルトに惚れていると言うのか?




二人の秘密…
あの暗号やら、交わすために決めたんじゃねーのかよ?




考えたらキリがなく
夕飯もロクに食えずなまま、

いたたまれなくなり

夜空の下にと身をおく。



フラフラとあてもなく歩く。




星が瞬く暗い空を見上げる


すると
朱色の鉄翼だけを広げて音をたてず静かにゆっくりと降下してくるナルトの姿が目に入った。



翼で破れたボロボロの制服。


閉じた瞳
金色薄い柔らかな髪
露になった肌が月灯に照らされ幻想的にも思え、魅入る。




「……ナルト…‥」


電線下位置くらいまで下ったナルトの名を自然と刻むと意識を戻したかに開かれる碧い色の瞳。

俺を映すと慌てたように満丸く見開き、
両手をバタバタ、両足をジタバタとして……


「わわッ!!見んな!
うわああーーッ」


着地失敗とこけた。




「…大丈夫かよ?」


抱き起こすと地べたに座ったまま俺の手を払いのけやがる。


「触んな!見んな!
もう放っとけってば!!」


「放っておける訳ねぇだろが。また怪我してんじゃねーか‥馬鹿。」

「うっせー!!しょーがねーだろッ、まだうまく調整できねーんだからさ!」


「お前、最終兵器の割りにトロくせェのな…」


「うっ…うっせーんだよ!」


「何故……」

「??」

「……お前より遥かに長けてる俺が選ばれなかった?」


「…サスケ…?」



「何故…、ウスラトンカチなお前なんだ?」

「………――。」



「お前と俺が逆の立場だったなら…こんな良い事はねーのによ…」

「…サス…ケ……」


「俺ならお前と違って優秀な最終兵器になっただろう…。なのに、何故お前なんだよ…!!」

悔しくて悔しくて…
情けなくて溢れだした滴……
ナルトを抱き締めながら何だか縋っていた。


「…泣くなよ、サスケ…」

「泣いてねーよ…」


「…泣く……な…ってば…」

俺の背中を撫でながら抱きつく
ナルトの瞳からポロポロと滴が溢れ俺の頬へと伝う。


暖かい涙……
ナルトは最終兵器じゃなく"人間"だ。


「…ナルト、…俺は
お前を守りたい…。お前がこの国を守るように……お前を……」


「…………サスケ…!」


「…お前なんかに負けねーくらいの力で……――。だから、俺の恋人でいろ‥」


「……ごめ……っ…、ごめんな…。でも…オレ…」

「何だよ…俺じゃ不足か…?」

「…そーじゃねぇ……、けど……」

「けど…?何だよ?」

「……オレ、フツーじゃねーだろ…?だから……」

「…お前が望んで…じゃねーだろ?」



「あったり前じゃん!!…そーだよ!…好きでこーなったんじゃねーんだ!」


「…わかってるよ。」


「オレだって、何でてって…!何でオレなんだって!!」


「…ナルト…」


俺はナルトの切なさを半分でも解りたく荒くとなる息を吐く唇を奪った。


舌を割り入れ小さな舌を舐め…啜り…
ナルトの唾液を俺の唾液と混ぜ合わせて……

「…んんっ……ふ……」

唇を解くと金魚のように酸素を吸い込むナルト。
その左頬を撫で、息をしてる唇の端に唇を押し当てた。


撫でる手を破れた制服の胸へと一直線に下し触れる。





………心臓の音が…………‥――。









ナルトには気付かせないように素早く手を退け再びと強く抱き締める。



体温も心音もない小さな身体……






「…サスケ…、オレ…ドキドキする…」


「…ああ、俺も…だぜ。」


「サスケのドキドキ……聞こえる…」


「ナルトの方が…音…デカいぜ…」





俺には聴こえる。
お前の旋律……
俺には伝わる
暖かい体温。






どこからか唄が聴こえる……


何のメロディだかどこから流れているのかは分からない。



「……サスケのドキドキする……音…大好きだってばよ…」


「俺も…ナルトの音が、好きだ……」





分かるのは
俺達のラブソング


耳に通るメロディよりも確かな和音を奏でている、この暖かと共鳴するリズム…。




俺達は"恋"している……


誰にも負けない
想いで……互いに――………















「…この町を離れ…この町の奴らの目が届かない東京あたりにでもお前を連れだしてェ気分だ…」



「ああ"?…東京なんか、もうとっくにねーってば…って、いけねッ!!」






ナルト
お前…………――
少しは空気ってェのを読んでくれ…




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