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Destiny-4


朝陽の眩しさで目を覚ます。



「サスケ、おはよう。」

昨晩は記念すべき
同棲生活の始まりだと言うのに不覚にも
眠っちまったらしい…。



…クソッ!
初めてナルトと布団を共にしたと言うのによ。


何やってんだか……



「ったく、‥情けねーぜ‥」


ナルトは既に目を覚まし起き上がり
俺が漏らす溜め息の理由を解らずに
小さな卓袱台の上に
昨晩の残り飯で握ったという、おむすびを並べていた。

「どした?朝から溜め息なんて吐いて‥さ」
「………――すまない、ナルト。」


「…??、何謝ってんだか、わかんねーけどとにかく朝飯食って元気だせ!」

「…ああ、ありがとう」

両手で握り飯を持つナルトの対面側に座り
一緒にナルトが握っただろう、おむすび食らう。




「ごちそーさまッ!」


「ひとつで足りんのかよ?」


パキパキと銀色のシートを折りカプセルをザラザラと掌に落とし
口に放り、水をコクンと飲んでそれ等を流して濡れた唇を拭い頷く。

「オレさ、昨晩ラーメン食ったから、あんま腹減ってねーし‥薬飲むとすげー腹膨れっし!…だからさ、悪りィけどあと二つ、サスケ食ってな!」

薬で腹が満たされるのか?と沸く疑問。

「二つずつのつもりで拵えたんじゃねーのか?」


「そうだけど、薬飲んでっからサスケよか腹減らねーし、量もマジで入らねんだ。…だからな、ソレ残ったらサスケの昼飯に持ち越すつもり。
ごめん、…ジエータイ辞めてもフツーの体に戻れなくて‥…」


「お前の分まで食ってやっから謝るな。」

「…うん、ごめん」


「………ナルト」



それにしても飲み過ぎなんじゃ‥と思う位
大量に飲まれた薬の中身が何なのか、また何の効能があるのかはナルトから知らされてはいない。

しかしナルトの体を保つ為に必要な物だとは安易に憶測がつくので訊かずと握り飯を放る。

「サスケ、美味しい?」

両肘を卓袱台に着け頬杖をつき若干首を傾げた問い掛けに「…ああ」と頷くと満面の笑みが目前に広がった。


「サスケが美味いって言ってくれっと嬉しいから、料理がんばるってばよ!」



か、…可愛い。

ヤベー‥

ぎゅうっと
こいつを抱き締めて、そのまま押し倒し
昨晩出来なかった記念の品をこいつに贈呈してェ‥


「ナルト…」


「なに?」


「こっち来いよ…」

「うん!」

座ったまま擦り寄るナルトの肩を抱き
頬に軽く口付けを贈る
「オレも‥!」

俺の頬に弾む音たてるナルトの唇を浚う。


「……ん‥」


浅く深くと吸いたて
小さな唇を抉り開け
舌を口内へ侵入させ
ゆっくりと絡める

「…‥んっ…‥ふ…」

詰める吐息
寝巻を手繰り掴む指

俺に合わせて運ばれる赤い舌…


「…ぷ…あっ‥」

撫ぜ合う舌を離して唇同士の距離を浮かせば酸素を求め開いた唇。
首筋に噛みつくかの口付けを流すと竦み揺れる肩先…

「‥あっ、‥…」

シャツの釦を外しながら開き、鎖骨を赤くと染めたく唇の吸引を強めた。

ナルトと……シたい。

衝動は治まらず舌を伸ばしシャツ間から晒した胸を舐めなぞり
軽めに反れた背を保ち抱いてナルトの甘い薄皮の尖端を舐め叩く。

「あ、っ…‥ン‥ぅ……やぁっ、‥サス──、…ダメぇ、ダメだってばァ!」


ドンと撥ね除け
乱した服を合わせ掴んで、赤く染まった頬を持ち上げるようにキツく俺を睨む碧瞳。


「…職、捜すんじゃなかったんか?」


「少しくれェいいじゃねーか。」


「サスケの少しはアテんならねェ‥。こんなコトまですっし…。」

「‥こんなコトって、どんな‥だよ?」


カッと赤らむ顔を覗き揶揄めかして笑い問いてナルト反応を愉しんでると俯き加減に顔を逸らし唇を噛んだかと思いきや、残った釦を全て自らで外しシャツかかる肩を下げ、あの時みた傷痕が心無しか消え失せた胸を露にとした。


「……‥サスケはソレがしたくてオレと一緒にいたいんか?」

羞恥じゃなく赤らむ頬、哀しげに向ける碧…


「だったらもう、……好きにしろよ。働こうなんてしなくていいからさ…」



一瞬にして
情けなさと罪悪感に襲われた。



「…悪かった。」


ナルトの前髪を掻きあげ額に口付けをひとつ落として自重と自嘲を己へと。


「お前があんまり可愛いもんだから…つい、な。」

髪をくしゃりと撫で
立ち上がり、着替えると俺は有言実行をするために家となった駅を出る。


「…バイト決まったら、エッチなコトしような!」



「…バカ、無理するな」


振り返り精一杯の痩せ我慢を渡し


心の中で今日中に決めてくると結託に胸を滾らせ、見送り手振るナルトから遠のく。




小さな漁港の町中にある店やらを一軒一軒尋ね回ったが生憎間に合ってるとの事。


どれくらい訊き回ったかは覚えちゃないが、漁港で漁師の手伝いを募集してると耳入れ、道を訊き市場にと足を踏み入れる。


「バイトを募集してると聞いて来たんだが此所でいいのか?」

比較的、年齢が近そうな奴に声をかけ尋ねると奥の部屋に案内された。

「姐さん、こいつが働きてーんだとォ!」


書類に向けた顔をあげ爪先から頭の天辺まで視線を浴びせフと息を抜くかに微か笑う中年の女。
どうやらこいつがこの漁港の長らしい。
何だか見下した態度が気に要らねぇが、贅沢は言っちゃらんねェ。
働く場所は恐らく此所しかない、からな。


簡単な説明を聞き若手不足ゆえに早速と今日から此所で雇われる事になったのはツイてたと言っていいだろう。

仕事内容は難しくはなかった。

昼過ぎに帰ってくる漁船網から魚を傷付けないように取り出し、魚を洗い、箱へと移し
明日の漁に備える作業の手伝いという単純な作業。

だが働いた事の無い俺にとって何もかもが初めての経験だった所為か、思ったより以外に……――




気が付くと空は暗く。
昼飯も食わなかった俺は酷く腹を空かせていた。


「みんなお疲れーッ」


漁で取れた魚介のうち売り物にはならない品が労いとなる夕飯が付いているのは有り難い。

しかしその前に今日の給金を貰いにと食堂の隣にある長の部屋へ皆と並んだ。



「坊や、ご苦労だったね。」

「…金…出るんだろ?」

「雇うとは言ったが金を払うとは言ってない。」

「何だと、話が違うじゃねーか…!」

「今日は仕事を覚えて貰うためと坊やがちゃんと此所で働けるか見させて貰った。
金は出さないが支給はある…。いい匂いするだろ?」

「ふざけんな!俺はナルトに飯を食わせてーから働いたんだ。たとえ一日だったとしてもな…」


「坊や…。アンタ随分と綺麗顔をしてるじゃないか、そういった場所に行けば相当稼げると思うけど……生憎うちは顔がいいとか悪いとか関係なくてね。」

「…何が言いたい?」


「物事や段取りを教え、それに見合った金を貰うって事の有り難みを知ってるかい?
坊やは働いた事なんか無いだろ?」

「……この年齢で学校も行かず、働いてる奴のが少ないんじゃねーか?」

「はっ、だから坊やは甘いんだ。それが当たり前だと思ってるだろ?ふざけんじゃないよ…。今まで親がそうして得た金で何不自由なく、ぬくぬくと育つのが常識だと思ってるなんて大間違いさ…。
そうした奴が誰かに守られなくなった時、どうなるか……──、御託はいいとして邪魔だよ。後の兄さんがつかえてるだろ?早く退いて飯食って明日も此所に来るかどうか考えろ。」


……畜生、…騙したのはそっちじゃねーか。

それを正当化しようなんざ、道理じゃねぇ‥。


「お前、邪魔なんだよ!」

「あーあ‥綱手の姐さんを怒らせちゃったらこの町で暮らしてけねーぞ、新入り!」


俺を笑い飛ばす薄汚い親父達の声。





いつだって優秀だと
周りには褒められていた。

兄には劣るが
勉強もスポーツも常に学年上位の位置にいた。


働く事よりも
将来を念をおき勉学に励む事が父さんや母さんを安心させてやる手段だと思っていた…。


いや……

現在はそんな事などどうでもいい。


守られていたものから離れたのは、守りたいものが出来たから……

なのに

俺はナルトに飯を食わせる金さえ手に出来ず、昨晩はアイツの働いた金で飯を食い、朝もアイツの働いて得た物を食ってきた。


今日は俺が…
アイツに…だったハズ。
なのに俺は…‥──



「ホレ、全部有り難くと召し上がれ」


今日の配給を手にする為に受け取った丼の中に、飯と称された物を盛り付けられる。


…魚のアラ汁?
それも身などなく骨ばかり。


こんなの食った事が無い。


食えんのかよ?
こんなの……





だが……、旨そうだ。






俺は酷く腹が減っていた。




その所為か逸早くとそいつを腹に掻き込んでいた。

礼儀も装わず
犬畜生みたいにガツガツと…






……



…――うまい……。


食えないと避けていた物がこんなに旨いもんだったと驚くより先に
ナルトにもコレを食わせてやりたいと思った…。







「坊や、明日は給金を出すよ…。」




肩を叩く長にと振り向き様に懇願していた…

「なぁ、悪いがビニールくれないか?
ナルトにもコレ食わせてやりてーんだ…」



「…ああ、あたしの分を持って行きな。」


「アンタに情けなんかかけられてたまるかよ。俺は俺の貰った分をアイツに食わせたいんだ…」


鎮まった周りの連中が漂わす空気が先程とは大きく変わっていた。

器ごとビニールに粗汁を包んで貰い、今日はラーメン屋が休みで家にいるナルトへと走り帰る。


冷めないうちに
食わせてやりたい。

俺が一日働いた報酬はこんな粗末な食い物だが、一生懸命働いて得たものだ。

一口でもいい、ナルトが口にしてくれたら………。




「ただいま…‥」


「おかえり、サスケ!」

「俺、…働いて、それで貰ったんだ……これ…」

「あったかい!いい匂い!オレ粗汁好きだぜっ」


「…半分俺が食っちまったから少ないとは思うが、…今日の飯だ。」


「サスケ、ありがとう。…あったかいうちにって走ってきたんだろ?」


その言葉が
髪を撫でるその手が
俺には有り難い。



「いただきます!」


器を持ちズズッと汁を啜るナルトが昨晩ラーメンを食った時よりも嬉しそうだった。


「うんめェエエーッ!サスケの、初めての給料ってすげーうめェ!オレさ、不思議だけど味わかるぜ!魚のッ!これさ、鮭だよな!」

「…良かった。…ナルトにも食わせたかったんだ。…旨かったから…」


ナルトの笑顔に安堵すると、知らない間に転た寝ていた。


「…サスケ、…ご苦労様。」


頬に弾んだナルトの唇。掛けてくれた布団。

安らげる空間……



ナルト

お前が居れば明日も頑張れる……




だから……



もう何処にも行くな。














朝、早くからの仕事に行くのに目を覚まし
ナルトの寝顔を見、
俺は少しだけ後悔をした。






また……


ナルトと
できなかったと…――。




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