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Destiny-3

ナルトがこの小さな町に戻って来た。



だが戦争の話は一切話題にはせず、本当に戦時中なのかと時折疑うほど平和が保たれるこの町の学校へと普段通りに二人で手繋ぎ通う日々が数日間続いた。



帰りは一緒には帰れない。


ナルトのポケベルが鳴らない日は一日足りともなかったからだ。




「ナルト…」


「何?、なんか不味かったか?本に書いてあった分量通りにしたんだけど‥ごめん、オレ味わかんねーから‥…」


「弁当は旨いぜ。」


「よかったァ‥」


隣でホッと胸を撫で下ろすナルトのズボンのポケットから単調な発信音が鳴り響く。
取り出さなくても解るシグナルに曇りがちな表情を浮かべ腰をあげる。


またか。

またナルトは……

そう思った瞬間
俺の伸びた手がナルトの手首を掴んでいた。

「もっと、お前と一緒に居たい。一分一秒でも長く……――」



澄んだ青空が広がる
昼休み。
屋上で
ナルトの拵えた弁当を食うのを止め俺の切実を伝えた。


目も合わせられず……
握る掌の力だけを頼りに‥…




「……サスケ。オレも──‥」



同じだと震える握り拳に視線をナルトに向ければ言葉を途切らせた唇を噛み締め、何かを思い詰めた碧眼は眇まり……


その様子を紛らわせたく俺はフと鼻から自らを嘲笑う息を吹かせた。


「……また明日、な。」

日に一度はナルトと伴う時間がある。

逢えなかった日々を振り返るとこうした現在が贅沢にさえ思えるが欲深くナルトを求める俺が居る。


ナルトが背負った布石も知らずな我侭を口にした事を後悔し擡げた頭を下げつつ手を離す。

直ぐに追いかける手に指を絡み取られ項垂れた頭をあげると微笑む碧瞳。金色の髪糸がきらきらとた陽射しに照らされ淡く優しい色に染まっていた。


「一緒に…町を出よっか?」


思い拠らずな発問に
言葉が出ず……
ただナルトの淡い碧色を見つめていた。



「今日のお仕事を最後にしてくる。…そしたら二人で誰も知らない町へ行こうぜ!」


ナルトの明るい笑顔が眩しく、掛けられた提示が嬉しかった。


「いや…、それじゃお前が困るだろ?」


ナルトと二人で居られるなら何がどうなろうと構わないが本音を押し殺して自制をかける。俺にもナルトにも……


「もうオレ、沢山がんばったから…いいと思うんだ。オレの好きにしたってさ。
‥オレの時間はジエータイのモンじゃねー‥、テメーのモンだ。」



ナルトは…本気だ。



「この町の駅で待ってるぜ…。荷物抱えてな。」


そして俺も…‥本気で応えた。




ポケベルをズボンのポケットから取り出すとコンクリートの床に投げ付けるかに落とし足で踏みにじり…

「お仕事行ってきますってばよ。」



敬礼をしてにこやかに笑い青い空へと飛翼を広げ、垂直に細い曇を昇らせた。


瞬く間のスピードで
最後の任務地へと向かう姿を見送り
一人食い掛けの弁当を再びと味わった。
























その日の夜

約束した場所で
大きなリュックを背負い俺へと走り向かう嬉色の表情浮かべたナルトを目に入れ

互いに伸びた手を握り繋いだ。


そして
電車を失った線路上を砂利を蹴り
眠くなるまで
二人で、ずっと
静かな星空の下を歩いた。



「何処に行く?」


「サスケと一緒ならドコまでも…──。なーんちゃって。」


ニッと歯を出し照れて笑うナルトが一歩先へと足を踏み出す。


宛てはないが目的はある。



「ああッ!?」

急に声を荒げたナルトが立ち止まった。


「どうした?」

振る変える顔は慌てふためき。

「オレってば、ジエータイからもらった金、家に置いて来ちまったってばよォオオオー!!」

頭を抱え蹲ったかとした途端、髪をわしゃわしゃと掻き毟る仕種。

「自衛隊から貰った金など最初から宛てにはしていない。むしろ無くて安心したぜ。」


ホラ立てと腕を掴み抱き上げキョトンとした顔を眺める。

「…うん!、やっぱやだよな、人殺して貰ったお金なんて…さ。」
憂い帯びた笑顔から簡単に心中が読み取れる。


柔らかな金糸を撫で
大丈夫だと伝え
僅かな所持金でも何とかなると添える。




「居住地を決めたら働こう。お前を食わせるだけの金があればいい。」


「オレも働く!一緒がいい。サスケがいればなんだって出来っかんな!」


元気良くと歩き出すナルトの手を確りと握り、歩調を合わせ進み行く。







使われてから随分と経つ駅のベンチで眠り
朝陽が昇る頃、目を覚ましナルトが持って来たおにぎりを一緒に食って、また歩き出す。

枕木が陽射しに揺らぐ日中
辿道を人気のない広大な道路へと変え
木陰で休み

人が住む町を捜して
彷徨う日が2日と過ぎた。

持ち合わせた食料は尽き、そろそろ居住地を決めないとと二人して心しのらりくらりと歩く道中、流石に歩き疲れたと息を切らすナルトが自衛隊の装甲車輛を後方より発見する。


ヤバいと焦るかと思いきや逆に「ツイてる、任せろ」と道路の中央に佇み、大きく手をブン回し振り車を止めた。


自衛隊との縁を立ち上切ったからには色々とあっただろうと懸念し聞けば
「こんな小隊なんかに顔は割れてねーハズ」だと親指を立て
戻らないようにした
安心しろ、と笑うアイツ。


運転席に座った隊員に近寄り何かを耳打ち、荷台に乗せて貰えると嬉しそうに俺を呼び……

半信半疑つつもナルトを信用し自衛隊員が既に乗り込んでいた荷台へナルトに手引かれ乗り込んだ。



無口な隊員達は皆、
俺達から視線を外し
顔を伏せた姿勢を保つ。何とも言えない独特の雰囲気の中でナルトだけがニコニコしていたのが印象的だった。


絶対にこいつらナルトを知っている…と直感する。


ナルトが何を言ったかは知る由もないが。





「海の香りがする!」

くんくんと鼻を鳴らし手を真っ直ぐ幌へと挙げ


「ココで降りる、降りますってばよ!」



止まった車から降り
おどけたかに笑い敬礼するナルトに対して丁重な敬礼を返した運転手の顔がヤケに強張ってたのが気になった。


ナルトは知らない人達だったと話すが、お前が知らなくても相手は知ってそうだったぞ。

……まあ、問い詰めても仕方ねーから黙っておくか。

大きな公道から道を逸らし夕暮れかかる町道を歩いてると幾人の人間が行き交うのを目にする。

やっと生活を営む町に訪れたようだ。


人が居住してる町を見たのは俺達が住む町以来だった。


通らない電車
失った交通手段の理由を弥が上にも知らされた。
2日間で本当に酷使とした戦争中なんだと平穏な町を出て思い知らされた。







俺達は人の住む盛んな海辺のこの町で暮らそうと決断した。

食って行く為には人が住む町じゃなきゃならないからだ。


勝手ではあるが戦争で誰も使わず誰も訪れる事のない、空となった駅の駅務室を住居に決め、生活に必要な物を買い、人が住める空間にと変え、食料を買いに再び町に出かけ歩く最中

「……さっきのヤツには威しといたから大丈夫。」


道すがら
独り言のようにナルトが呟いた。俺がナルトの身の保安を心配していると察したからだろう。


「誰もオレを見ようとはしなかっただろ?」


…威したからか?



「あッ!ラーメン屋発見ッ!!、サスケラーメン食おぜ、腹減ったってばよ!」


「買いだしはいいのかよ?」


「明日にする!ラーメン、ラーメン!」


「金、残り少ないだろ?」

俺の所持金は
さっきの買いだしで散財した。ナルトには出させたくないが一緒に生活するには互いの協力が必要だと言い張るナルト。

「大丈夫!金ならあっから……――、アレ?……確かポケットん中に…アレェエエエエッ!!?」


青褪めた面で服を探る。

「…ナルト、お前まさか……」


「ジエータイの車ん中かな?、それとも寝た時とかに落としたとか……。もしかしたら最初から忘れちまってたんかもッ‥!!」



「ラーメンどころじゃなくなっちまったな。」


「ごめん…。」


「俺は要らないがお前腹減ったんだろ?」


今日の朝から水以外口にしてないのは互いにだった所為か不本意に俺の腹が鳴っちまった。


「…サスケは、ちっとだけココで待ってろ。
ぜってー、お前にラーメン食わせてやっかんなッ!」

「オイ…!」

引き止める声も聴かず、言ったが直ぐガラリとラーメン店の戸を開け中へと姿を消した。



「事情話したらラーメン食わせてくれるってさ!」


数分も立たない内に店の戸が空き店内へと手招く。

「ナルト、お前…」


「オッチャンさ、戦争で足やられちまって‥そんで……」

紙にマジックで書かれたメニューが貼られた壁の下に
[アルバイト募集]と書かれた一枚の紙を指差すナルトが店主とニッコリ笑いあう。


「今日からオレ、ラーメン屋の兄ちゃんになったってばよ!」

…何?


「元気のいい若い子がこの町にはいねーかんなァ。オッチャン助かるぜェ。宜しくな、ナルト君。」

髭面の店主がまるで俺に事を把握させるみたいにナルトへ声を弾ませた。


早速と店のエプロンを身に着け頭にバンダナを被るナルトに促され席に着く。

「給料は日払いなんだって、だから今日の給料でラーメン食えんぜ!」




ナルト……



お前ってタフだよな。





俺が攻めなのに
立場から言やァ
亭主なのによ……

ナルトの突拍子もない機転とラーメンへの執着に愕然とした。


何とも言えない気分だ。
ナルトに先を越されちまった、敗北感に胸が軋む。


「オッチャン、オレ味噌ラーメンな!
サスケは…?」


「……醤油でいい。」



「味噌一丁!醤油一丁!」


「はいよー!」


バリッと袋を破く音。

「オイオイ、マジか!
インスタントなんかよ!オッチャン!!」


「このご時世だ、インスタントでも感謝しなきゃなァ〜。」


確かに…
と頷くと
器を用意する店主の太股の先がないのに気がついた。



「うんめ〜‥、インスタントでも超うめー‥」

味が分からないハズのナルトが本当に旨そうにインスタントラーメンを掻き込んだ。


傍らで味の違う同種のラーメンを食い
俺も凄く旨いと認識する。



インスタントを有り難いと思うほど飢えていた。
そして
それを有り難いと思えるほど不足した食料と物資。


便利と普及した物さえガラクタと化した
この現実……


膝下を失ったが明るい笑顔を宿す店主と
ナルトのラーメンを啜る姿を横目に思う。



強くなければ生きていけない……、と。









明日になったら朝一番で職を捜そう。



働いた事などないが何とかなる。

俺はナルトより稼いでやる。




そう決めて
仕事をするからと言うナルトに見送られ
二人の家へと先に帰る。






部屋を片して
風呂の支度して

ナルトの帰りを待つ。



……逆なのは
今日だけだと心して…──。




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