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終わりと始まり


招き入れてくれたお隣りさんは、ただ解除ボタンを押しただけで扉の鍵を開けたらしくて、暗い灯のない玄関にはいなかった。

リビングに続く同じ間取りの廊下を歩く。
安心したんか涙が止まんない。

リビングの扉を開けっと夕映え映る広いテラス窓の方向にこの家の主が座っていた。
灯もまだつけてない薄暗い部屋の大きな窓を照らすオレンジ色の空がキレーだ。なんもなかったみたいに思える。

オレんちとは違って生活感のないシンプルで静かな部屋。
突然侵入してきたオレに驚いた様子もなく、背を向けたまま何かをしてる家主さんにまずは頭を下げる。

「あの……、ありがと…う!……助かり‥ま…した…。」
「…お前、泣いてんのか?」

どっかで聞いた声……

「…ごめんなさい!ホント突然…――」

振り返った見慣れた顔。夕焼けに照らされて、キレーにも思えた目が何故か学校でみるよか優しかった。

「うちは先…生?」

何で?という疑問もあっけど、それよか見知った顔に、さらに安心しちまってホッと胸をなで下ろす。

「先生がオレんちのお隣りさんだったんか……」
「それより、何故泣いてる…うずまきナルト。」
「…う……っ…実は……――」

オレは今さっき目にした光景を包み隠さず、こいつに話した。
動揺してたけど、きっと頼れるのはコイツしかいないと判断したからだ。
こいつは黙って振り返った姿勢を元に直してオレの話をジッと訊いていた。

「何が何だかわかんねーけど、あんな小さな弟まで容赦なく殺すなんて信じらんねェ!
オレは……アイツらを許さねぇ……。一生かけてアイツらに復讐してやらァ!」

強い口調で、気持ちを伝える。感情に任せた勢いで。
コイツが冷静だったからこそ、自分の感情を晒せたんだと思う。

「……――殺したいのか?」
「…ああ。メッタンメッタンのギッチョギッチョにしてやりてェ!」
「…殺し屋に頼むって手があるぞ。」
「オレは殺し屋なんか雇わねーよ!オレがむしろ殺し屋になってでもアイツらに手を下す!ぜってーにだ!」


それほど許せなかった。
弟を助けてやるコトも出来なかったオレ……

あの銃声……

木の葉丸の断末の声は聞こえなかったけど、あんなにバンバン撃たれたら……――

「殺し屋…探して弟子入りしてェ……――」

まるで絵空事。
殺し屋なんて実際にはいやしねーし、いたとしても危険な組織に違いねーし、オレとは無縁。
幼稚だってのは、わかってる。
けど、オレは感情のままを口にして、涙を消し去っていた。

先生が背中を向けたまま立ち上がる。
逆光で暗くてよく見えない部屋の灯をつけて、オレの目の前に佇み、手入れしていたモンをこれみよがしに翳す。

「………!!?…」

ビックリして抱き抱えてた紙袋を落とし、床にオレンジやらを転がす。

「弟子入り‥するか?」

物騒なモンを目の前に突きつける先生の冷たい眼差し。話さなくても十分わかった。

学校じゃあ数学なんて教えてるこいつが、公務員のクセに副業を持ち、何をしてるか…ってなコトが知れる。
秘密を明かしてくれたのは、オレの意思を真剣に捉えてくれた証。
それと、お互い信頼して、秘密を共有したってな証。

「……ヨロシク頼むぜ、先生。」

空いたオレの手に翳した拳銃を渡す武骨な手……冷ややな目が笑う。

「俺も復讐の為にこの世界に入った。やはり餓鬼の頃…――お前と変わらずな経験をしてな…」

そっか。だから、すんなり受け入れてくれたんか。コイツも相当な過去があるっぽい。
詳しく訊きてェけど、今は黙ってた方がいいだろう。

「お前、携帯電話は持ってるか?」
「防犯ブザーは持ってっけど、携帯電話は使わねーかんな。母ちゃんは持てってうるさかったけど…」

「それなら都合がいい。逆探されたら困るからな…」
「逆探?」

携帯電話はそういうシステムがついてっからだって、うちは先生は言う。
「へェ〜、なんかあった時とか、すげー便利じゃんか。」
「一般的にはそうだな。」
「じゃあ、なんでオレが持ってたらマズイんだ?なんか問題でもあんのか?」
「ナルト、お前が狙われてるからだ…」
「あ!!?」
「お前の話からして間違いなく、奴らは裏稼業の組織に配下する連中だ。そういった個人情報の収集も容易い機械や術を持ってるからな。」
「そっか、オレってば狙われてから…」
「いいか、警察には報せるな。いずれ通報が入る。そして気になるだろうが、お前は姿をくらませとけ。学校にも来るな、俺がうまく手続きしておく。それと、お前の父親の関係やらマスコミにも手は打っておこう……」
「……――うん。ありがとう先生、お前ってば本当はいいヤツだったんだな…」

うちは先生の優しさと気遣い、心強い言葉が嬉しくて、込み上げる。

「………もう、先生と呼ぶな。」

照れたように目を逸らしてオレンジを拾い、破れた紙袋を抱えて冷蔵庫へそれらをしまう先生の姿を追う。
何だかエラく親近感が沸いたのと頼れる大人がいるってな安心感とで流れた涙をグシグシと拳で拭う。

「んじゃあ、なんて呼べばいいんだ?」
「…好きにしろ。」

先生がダメなら、…家族っぽくお兄ちゃん?
父ちゃんにしたら若過ぎるかんな。
でも、なんか家族みてーに呼ぶのは照れくさい。
「…――サスケ。」
「……なんだよ?…ウスラトンカチ。」
「…なぁ…サスケ」
「?」
「……あり‥がと。」
「!?」

拳銃を床に落として、身を屈め、冷蔵庫に牛乳をしまうサスケの背中に抱きついた。
サスケは何も言わずにしばらく冷蔵庫を開きっぱなしにして俯いたように、頭を幾分か下げて、しばらくそのマンマで居てくれた。

オレは、今日から名字のない[ナルト]として
ココで[サスケ]と暮らすコトになった。




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あきゅろす。
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