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セナさんの奇妙な体験

帰宅電車を待ってる間に私の目の前で二人の高校生が通過電車に跳ねられて死んだ。




二人とも流行りのBLにおあつらえ向きな感じの顔をしてた子達だった。


もったいないコトに
バラバラのこなごなで…‥、いくらグロいのが好きなセナでも流石にキモチ悪いやと思った。



しかし勿体ない。


金髪のナルトと呼ばれた子は受けで、黒髪の美形な子は攻めで……
あの二人なら
あんなコトもこんなコトも‥
どうせ血塗れになるならアッチで…―――
なんて妄想してた場合じゃなかった。
でもセナは怖くて何も出来なくて……
この結末に声もでなくて立ち竦んでただけだった。



呼んでも来なかった駅員。


セナと同じように傍観しているだけの人達。



浮浪者のオジサンを助けたのはサラリーマンやバラバラ死体が見たいとか言ってた高校生達だった。




最悪だけど、あの二人が助けたかった命は助かったのが幸いだ。


今、セナに出来るコトは‥―――


よし!


誰も近寄らない酔っ払いの浮浪者の肩を叩く。


「あの‥、起きて下さい!大変なんです!」


「うィ〜‥…」


「オジサンが酔って駅のホームに落ちた所為で高校生が二人も死んだんです!」


見ず知らずの人に仕事以外で話しかけるなんて
しかもホームレスの汚いオジサンに……

セナとしたら凄い快挙だ。


「はあ?…んなこたァ知るかってえの〜。
それよりオネエちゃん可愛いねェ〜‥ウヒヒ…」


ニヤニヤしてる見窄らしい顔……
生きてる事に
助けてもらった事に
全ッ然感謝も何もしてないなんて!

ムカつく!


「いってェな!なんだァ〜、この女ァはよ〜‥おーいてェ…‥」


触るのも嫌だったけど思い切り頬を叩いてやったら逃げるように駅構内から出ていった。


心まで腐った奴…。


もし神様がいるとしたら間違った選択をしたと思う。


こんな事
思ったらいけないけど
誰が見ても目に見えてあの二人の方が生きる価値がある。


あの子達は誰よりも勇敢だった。

そう思ったら涙が出てきた。
今ごろ、自分は何やってたんだろうなとか

何故……と。



悔しくて
やり切れなくて

憤慨してた。


あのホームレスに

アイツに酒を買わせた奴に


キモチ悪いと
吐いてる人達に

叫んで駅から逃げた人達に


事故を防げなかった
状況に


ブレーキすらかけなかった通過電車に



「マジマジ、人身事故だって!」

「ちょーキモかったって。」

「いやなモン見ちゃってさ。」

携帯で事故現場を目の当たりにしたコトを自慢げに、もしくは自分達が被害者みたいに話してる奴らに




「駅員コッチ、コッチー!!早く!」


それから駅員が漸く現れた。



「さっきから非常ボタン押してたんだけどアンタら何やってたんだ!」


「そうよ、構内に誰も居ないなんて第一可笑しいわよ!」


「二人も高校生が死んだんだぞ!酔っ払いを助けて通過列車に轢かれたんだ!」

「フツー止まんべ?電車、人轢いてんだかんよ。なのに何もなかったように通過してったぜ?」
次々と現れた駅員達に罵声を浴びせる声の中にセナも
交じってた。


「なんで早く対処してくれなかったの!」

泣き叫んでた…
初めてだった人前でこんなに取り乱したのは……


「いえ、ベルも鳴りませんでしたし緊急の連絡もありませんでしたので…。」


「壊れてたんじゃないんですか!?」


「いえ、正常に作動してます。念の為、先程の通過列車の車掌とも連絡を取りましたが別段、何もなく正常に運行したと……」


「私達が嘘をついてるとか思ってるんですか!証人は沢山いますよ!」


「そうだ!」


「そうよ!」



「しかし、御覧頂ければ皆様御分かりのように事故の跡など一切御座いませんが……」


「えッ!?」




ホームの上にまで飛び散った内蔵のかけらも

血生臭さも消えていて


バラバラになったあの二人の姿もなくて……





本当に不思議な事に
何もなかった景色が広がっていた。




駅員と作業員の点検も異常なしの結果が下り



通報によって
停車していた電車も動きだし


いつもと同じ駅構内の風景の中


まるで狐に摘まれた気分だと皆で口々に語り



この事をブログらなきゃ!と思いながら帰路を辿る電車に乗った。







もしかしたら
あの二人は生きてて


また逢えるかも知れない。
なんて混んでる電車の中で携帯の文字を走らせていた。




一体
何だったんだろう?
と疑問が消えないまま………





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