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そして僕は途方に暮れる


「まだ電車来ないんかなァ…」

休み明けの授業とかすげー怠かったから早く帰りてェのによ。電車に乗り遅れるなんて最悪‥

なんて思いながら
オレは今日発売の週間漫画誌をパラパラとめくっていた。
文字を目で追うのもめんどーだったけどあまりにも暇で。

っていうか、学校の連中とは話す気力もねーから、それを避けるみてーにして漫画に夢中なフリをしてたんだ。


何となく気になってた忍者漫画の扉絵をめくった時、ドサッと派手ながらに鈍い音が地下鉄のホームに響く。

「酔っ払いがホームに落ちたぞ!」

サラリーマンとか、おんなじ学校のヤツ、他校のヤツら、OLっぽい姉ちゃん、オバチャンにオジチャン達が野次馬となってホームを覗く。

退屈していたオレも漫画よか、モチロンそっちが気になり野次馬の列の中へレッツゴー!

落ちたのは浮浪者みてーな汚ねぇオッサン。
頭かなんかを枕木で撃ったショックで気ィ失ってんだか酔っ払って意識墜ちてんのかは、わかんねーけど‥ぐったりしてた。

「駅員呼べ!駅員!」


命令口調で叫んでるよか、テメーで呼んでくりゃいいじゃん。

「アラ大変、生きてるのかしら?」

そー言ったオバチャンが確認すれば?


「電車来たらヤベーじゃん!」

「でも人間がバラバラんなるとこ見たくね?」

「こんな浮浪者、助かったってロクなモンじゃねーよなァ‥」

「どっちにしたってマジでめーわく‥」

「まだかよ、駅員…」

こいつら……
何て勝手なんだろ。
人の命をなんだと思ってやがんだ…

このオッサンだって好きで浮浪者になったワケじゃねーかも知んねーんだぞ!


こんなヤツでも
きっと悲しんでくれる人がいるんだろうな…


オッサンにはオッサンの抱えてるモンがある。

何もしねーで、高みの見物かましてるヤツらに腹が立ったオレは、自然とホーム下に飛び下りて倒れてるオッサンを起こそうと体を揺すってた。

「大丈夫かよ?オッサン…」


「うう‥…」


よかった。
生きてたし、意識はちょっとあるみたいで……

「肩貸してやっから、ホラ…」

脱力したまんまのオッサンは思ったよか重くて起きあげるのも困難で、うまく運べない…


「おい、何やってんだウスラトンカチ…」


うげ!最悪なヤツに見つかったってばよ!

「見りゃあわかんだろ!人助けしてんだ!人助け!!誰も助けてやんねーからさ!!」

「当たり前だ。誰だって巻き添えはごめんだからな…」

「手伝う気ねーならアッチいけよ、サスケ!!テメーがいっと気が散るんだよ!」

「オッサン一人も持ち上げらんねーなんてナルト‥やっぱり、お前はウスラトンカチだぜ。」

制服ズボンのポケットから手を引き抜くとサスケは鞄を投げ置いてホームの下に飛び下り、酔っ払ったオッサンを立ち上げんのを手伝ってくれた。


オレ達を見てたホーム上にいる野次馬連中も協力してくれて何とかオッサンを助けられた。

「いっつもオレのコト馬鹿にして何だかんだと突っ掛かってくるけどさ、サスケ‥お前ホントはいいヤツだったんだな!」

「フン…、勘違いすんな。俺はただ単に馬鹿に貸しを作ってやっただけだぜ?」

「前言撤回!やっぱお前ってば嫌な奴だってばよ!!」

「まもなく電車が参ります。白線の内側まで下がってお待ち下さい。」

ホームの上に上がろうとした時耳に流れたアナウンス。
駅員はまだこない。

そのアナウンスを聞いて死ぬかも…って思ったら、吐き気がして、体が強張って、全然動けなくなっちまった。

サスケは高いホームの上に半分、体を登らせてたけど青褪めて立ちすくんでいるオレをチラッと見っと、また足を枕木上にと戻した。


ヤベー!!
電車が向かってくる
光がみえる

ざけんな、くンなよ!

オレ達コロス気かよ!?


「ナルト!何してる!早く登れって…‥そんな余裕はもうねーな。とにかく走れ、ホラ…!」

「ダメだ!
もう間に合わないってばァアアア!!」

「いいから走れ!最前列の車両の停止位置より前まで走るんだ‥!!」





そっか
さすが秀才。やっぱ頭いいのな!


オレの手を引き繋いで全速で走るサスケに
必死んなってついて行く。



助かる……



助かる!


助かるんだ!




「…ハァ‥ハァ‥」




まだ助かる!






駆けっこには
密かに自信あるんだよな、オレ!

ホラ
サスケともう並んでんじゃんよ。


もう少しだ停止線

‥‥ガンバレ!


走るんだ!


二人して電車のライトに振り返るコトなく、無言で停止線前っていうゴールを目指して突っ走ってた。

そん時、誰かがホームの上から叫んだ…
「通過列車だぞ!!バカ野郎!!!」




「え?」




さっきまで漫画を読んでていた。


怠りィとか最悪とか思ってたけど
さっきまでは
いつも通りの景色だった…‥


今日はいいコトをしたって、
オッサン、助かってよかったって

嫌味なヤツだと思ってたサスケと今日から仲良くなれっと思ってた。


なのに……何で?


「…サ…スケ‥ごめ‥ん…」


「謝んなよ‥馬鹿…」

それでもオレ達は


生きたくて


走ってた。


背中にあたる電車のライトの眩しさにも振り返らずに…‥


生きるコトを諦めずに……








「きゃああああ━━━」

「うわァアアアア―!!」



るっせーなァ

いちいち騒ぐなってばよ。





げげ、なんだよ、サスケ!
色男が台無しじゃんか!
うげッ‥
気持ち悪りィ‥――
首、飛んじゃって。



あん時、オレなんか放といてくれりゃあ、お前はこんな目に遭わなかったってーのに…。

いや
サッサとさっきホームの上に登ってりゃ――‥…って、

……なんでこいつ戻ってきたんだろ?


ヘンなの。


あ〜あ‥
バラバラんなっちまって……‥



あ‥!

オレも
体、無いかも…―――



一人助けんのに二人の命かけて、どーすんだってー‥話。



でも…

まァいっか、これで…

名前‥載るよな
新聞にテレビに‥‥



見放された
オレの名前が、……世間の誰かの記憶に残るかも‥‥

















オレとサスケは一人の酔っ払いな浮浪者を助けて





死んだ








電車に体当たりされて

首跳ねて
身体バラバラんなって内蔵飛び散らせて……

死んだ。



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あきゅろす。
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