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Destiny-2

学校に行こうと家を出たのはいいが
始まった戦争の行く末を考えると何となく今日は気分じゃなくなり…そんな滅入る気を一掃したくと、登校途中で足取りを変える。



自然と赴く行き先は立ち寄るのが日課となった、あの場所。



朝陽に照らされる町の風景を目にすれば
気分が変わるハズと何故か安易に考え歩く。


丘のようになだらかな傾斜の山道には、もう馴れていた。

緑溢れる樹々間から流れる空気にも、
葉の間合いから射し込む陽の光にも
囀る野生の鳥も
時間はその都度に違うが、いつもと変わらない景色だ。






目的の地に足を踏み出すと、いつもとは違う景色が視界に広がった。




一瞬で、失った色が宿る。


眠っている
朝靄纏う金色髪の雫が鮮やさを引き戻す…。


強張った顔と
心が鉛眼の瞳孔が金色に染まり行くかに綻びる…


眼に宿しただけだと言うのに不思議と養う感覚に戸惑っているのか足が動かねェ。


逸早く
腕にしたい願うのに……。





俺に微かな笑みが宿った頃合、我に返ったかに足が進んだ。


揺らぐ寝息を見落とすと俺の書いた文字に乾き切らない染痕が滲み字の端切れは片手の親指で覆われ……――
それだけで
伝わって来た
こいつの気持ち……


俺だけではなかった事が知れ安堵して制服の上着を脱ぐ。

腰を屈め
破れた背中の布を、それで隠してやる。


隣りに腰を降ろして
金色の僅か湿った糸の中に五の指を通す様にして髪をゆっくりと梳き流す。


微か伝わる温もりと感触が酷く愛しく
自然と心が穏やかになって行く。



こんな小さな奴が
俺にとってどれほど大きな存在か思い知らされる。

そう感じ、思うのは
何かの絆に疎通してるからだろうと勝手に決め付け
多分、こいつも
同じなんだと理屈抜きな思想を頭に過ぎらせ何度も繰り返して髪を撫でいると眠って居るにも拘らず、ニィと口元が笑った。


まるで
そうだと言うように………






眺めようとした景色は視界に渡る事なく
予期しなかった出来事を運んだ奴を眺めて
平穏な時に浸り……
流れる時間を緩やかに感じ、時が止まってしまえば良いと眼を伏せた時撫で髪が動き揺れた……――




「……う……ん…‥」



目を擦り
俺との民族の違いを表す碧色を広げる様子に唇を開く。


「…お帰り。」



寝返りを打つように体勢を変えると驚いた様子で縦広げた眼を見開き、上半身を起こしたナルトが二度、三度と瞬きを繰り返して微笑んだ。





「………ただいま。」









1ヶ月ぶりに再会した俺達が
交わした言葉は
それだけだった。







後は磁石が惹き合うように、


ただ抱き締め合っていた。



互いに



何も言わず



何も訊かず



逢えなかった時間を埋める様に……――




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あきゅろす。
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