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distance-10


ようやっと
海外派遣を終えて静まり返った大阪の夜の街降下して行く。



動かなくなった敵と味方が地に伏せている姿が点々とした様子が視界に渡る。


「な!…まさか、オレがいねー間に!!」


悪い予感が蔓延り
顔が青褪める。


離陸位置の計算すら出来ねーまんまに足つけた場所は大阪の有名な繁華街……灯の無い食い倒れの街だった。


本拠地へと走り続ける中で…
地に横たわるサイの姿を見つけちまった。


「‥サイ!!
やい!起きろっ一体何があったんだ!」


何も言わない冷えた身体を揺すり頬を叩く。



けど‥…




眠ったまんま何にも言わなかった。



「だから…、言ったじゃんか……‥オレなんかおまもりにすんじゃねーって…」



落ちる涙が固まったサイの血液を溶かしてく……。


「……オレがいたら、こんな目に合わせなかったのによ……、ごめんな…、ごめん。」


悔しくて悔しくて
涙が止まんなくて……ただサイを抱き締めていた。




目ェ開けっと
イタチの拳銃が地に転がっていた。


「…もう辛い思いしなくていいだかんな。ゆっくり眠ってな…」


オレはサイを仰向けに寝かせてまだ硬直が始まってない手を胸へと組ませた。


そして背中が破れた上服を上半身に掛けてやり、敬礼をビっと決めサイを弔った。

それから
頭ん中にあるレーダーチップを頼りに他の仲間を探ったけど、点在する発着信号の映像から生体反応があるとされたのはイタチのだけだった。



「急がなきゃ…ヤバい!」


オレとイタチが居住する場所へと急ぐ。


鍵のかかってない扉を開けるとボヤケた映像とおんなじ血だらけの姿でベッドに倒れてるイタチが目に飛び込んだ。


「…デイダラか………まさか…お前に逢えるとはな…」


きっと視力がイカレちまって勘違いしてんだろう……

イタチが口にした名前は奥さんで
どんな人かと言うと………見たコトはなかったけど、今…イタチが手にしてる写真の人だろう。

それに視線を向けると
オレと同じ髪の色と
同じ青い眼……

この人って……



…あ…‥

だからジエータイの宿舎に居たんだ。

だから

サスケと……


でも、サスケとは……



あっ!!

そっか…、オレがイタチにサスケの面影を抱いたのとおんなじだったんだ。


戦争で逢えなくなっちまった旦那さんの姿をよく似たサスケに被せて………
甘えてたんだな……
あの人。



愚図で鈍なオレにもわかった。
サスケは代わりをしてやっただけだったんだ。なのにオレ……
話も聞かねーで
いろいろ一人で変なコトばっか考えて誤解して勝手に解釈して"兵器"ってのを理由に…………。


オレは"兵器"って立場を利用し卑屈んなってただけだったと
死ぬ間際の人間を目の前にして気づく……――



「…逢いたかったよ…………デイダラ…」

写真を顔脇に離して伸びる腕
こんな優しい顔したイタチは見たコトがねー‥


サスケも…そうだ。

サスケもオレにしか
しない表情がある。



おんなじ…‥なんだ。



どんなに強くと皆に示すような態度をとっても愛しい人には表情を崩し感情のまんまになる。

全部さらけだして

必要だって……

好きなんだって

一緒に居ると安心
出来んだって……‥


そう教え合うんだ。


‥…言葉に出来なくても。







デイダラ…


この人とサスケの会話、デリっちまったけど………何とかデータ探れねーかな。

最期に逢わせてやりてーんだ、こいつの大切な人に……――




「ただいま、イタチ」


「…ああ、…デイダラ……済まない。…連絡も碌に出来ず――…」

普段よか声を低く…
特徴的な口調を大切にを心がけベッドに乗り座りイタチの額を撫でる。


「ん…、大丈夫だ。今こうしてお前に逢えたかんな…」


「お前、何だか痩せて小さくなったな…」



「最近太っちゃってさ、ダイエットしてたんだ。」

「髪も切ったのか…?」

「長くて邪魔だったかんな。」


「眼が霞んでお前の顔が良く見えん。……もっと顔を寄せてくれないか…?」

「こうか?」

「……もっと、だ…――」

「……ん!!?……」


吐息がかかるくれェまで近く顔を落とすと、後髪を押さえられ……唇を奪われちまって、ビックリした。


サスケしか…
だったのに……って哀しかったけど
今、オレはこいつの奥さんのフリしてっから邪険にはできねー‥



それに……
何故だか、不思議と嫌じゃなかった。



逢いたくても逢えなくて、だったからキスしたかったよな……――

嫌じゃなかったんは、その気持ちがわかっからかも知んねー。


「…ん、……イタチ‥っ……ふ……」


短く啄む口付けが繰り返される。



サスケとはコレでおあいこ………なんだと、てめーに言い聞かせっと、コレでサスケを責めないですむ気がした。

純粋にサスケを想ってられるって。



サスケに似た顔
サスケと同じ血が流れたヤツをサスケに見立てて
サスケなんだと意識をすると、胸がキュンとなった。

そんな風にして、イタチのキスを受け止めてたら、いつの間にかオレからもイタチに口付けを送ってた……。

「んっ…んん…」

イタチの舌を求めて、その口内へとてめーの舌を挿し込み、絡め合わせて、唾液に混ざる赤い血を啜る。味はわかんねーけどイタチの生きてる温度はわかった。
それを互いに攪拌しては、飲み込んで、執拗に求めて赤舌を擦り付ける。

イタチが、愛しいと思った。
この時だけはサスケじゃなくて、イタチが……だった。



「最期に……逢えて嬉しいよ……」


唇を離したイタチの微笑みを至近に見落とすと、血糊に染まった唇がオレの唇で拭われて、何だか薄い口紅をつけたみてーになってた。

整った顔立ちにそれが妙に映えてて、儚げで綺麗だった。


「最期ってなんだい?」

「…此の姿だ。…察しが付くだろう?」

「……――何かあったのか?そういや帰って玄関開けた時から
へんなコト、口にしてたし……優しいオイラは口振り合わせてやったけどさ。」


「どういう事だ…?」


「うーん…それはコッチが訊きてーくらい………って、あ!!…わかった!オイラが買い物に行ってる間、悪い夢でも見てたんだろ?」


「…買い物?……夢…?」


「そうだ、夢…、うたた寝してて悪い夢見てたんだよ!」


「………夢…だったのか、なら…安心した。」

安堵した息を弱く吐くイタチ。
こんな嘘に騙されるなんて通常じゃあ有り得ねェ。
思考力もイカレちまってんのか、わざと騙されたフリをしてんのかはわかんねーけど、オレは……前者に賭けてみるコトに決め、この世の中の出来事をこれまでにあったイタチの戦争の記憶を全部"夢"で片付けるコトにした。


「どんな夢、見たんだい?」


「…戦争の夢だった……、最後の敵を倒したのは良いが……体内に毒を混入されてな……、…う……ッ…」

咳込み血反吐を吐くイタチの唇や顔を手許にあったタオルで拭う。
疑いなく答えたのは、やっぱ猛毒に神経が麻痺してイカレちまったんだな。

多分、
ココまで辿り着いたのは意志の強さだけ…――

こいつはそれほどまでに愛してんだ……。

大切な人を……―――

「ほら、ちゃんと布団掛けねーとダメじゃんか!…風邪引いて会社休んでんだからさ!」

布団を掛け直すフリをしてイタチの傷だらけの身体を掛け布団で覆い隠す。


「……ああ…済まない。…そう…だったか。」


「今、お粥でも拵えてやっから、待ってろよ」


「……行くな……」

震える腕に止められて腰をベッドに戻す。


「……身体が痺れる……頭が重い……‥あんな夢を見た所為か、情け無いが不安でな………今だけでいい……
傍に居てくれ…」

「……うん」

縋るイタチの隣りに潜り上着の無いシャツ一枚の胸板へと抱き寄せる。


「…こうしてれば怖くない、…もうすぐ楽になるから安心してな…。」


黒く長い束ね髪を小さな子供を癒すように撫でる……

何度も……


何度も……

喋るのも困難で
呼吸をするのも精一杯。

痛みだって相当なハズ……

こんな姿になってまで伝えたいコト

しっかりデイダラ
として受け止めてやっから大丈夫……


「……ありがとう、……デイダラ……――」
















イタチの言葉を聞いたのはコレが最期だった……



オレの胸ん中で……
静かに眠ったイタチ……


オレはデイダラのフリを止めて
テメーの意思で動かなくなったイタチを抱き締めた。


強く……



………強く





「…最期まで……逢わせてやれなくて……ごめんな!……嘘ついてごめんな!」






戦争は……いやだ……





いいコトなんて
ひとつもねー‥…



奪うコトばっかだ……





なのに何で

人は争うコトを止めないんだろう……。







届かない怒りと想いに声を高くあげ
泣きじゃくった……。










その後オレは
イタチの遺品として血だらけになったデイダラの写真を持ち、イタチ専用の銃を抱え



戦場と化した街ごと
弔うつもりで
空へと閃光を走らせた。






仲間達が見た"悪い夢"を終わらせるため……




















空へ飛び立ったまま
故郷へ向かった。
イタチがどれほど愛しい人を想い生きてきたか……

それをデイダラに知らせるため……


本物のデイダラにイタチを逢わせたくて………










北の大地にあるジエータイの宿舎……

敬礼する者の横を素通りしてイタチとデイダラの住居前へと足急がせる。


玄関前に遺品を置き
ノックをして直ぐに空へと舞い上がる。
上空から遺品を受け取り胸に抱くデイダラの小さな姿を確認して。


それから
せっかくだからと、あの場所に向かうコトにして高度を下げた。





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