♯追っかけ3 (こんなにも愛してると言うのに… この俺の深くて一途な想いを汲み取れず、…イタチなんかと…――) 「クソッ!!」 あのクソ兄貴、俺がどんなにルナを愛してるか分かっていながら、何故キスなんてしやがった? 純情無垢なルナの唇を奪っただなんて、いくら仕事で仕方なくだったとしても、許せねェ。 第一、初めて聞いたぞ。 そんなシーンがあるだなんて…… 俺に言っちゃくれなかったじゃねーか。 そうか、なるほどな。 二人して俺を騙してた…って訳か。 …ルナもルナだ。 易々とオビトの戦略に躍らされてビッチに成り下がりやがって! 怒りに満ちた俺の頭の中には、もはや映画の宣伝を装った、あの娘とスキャンダルな場面しか思い浮かばなかった。 “人気若手俳優と国民的アイドルの禁断の恋” “大手芸能プロダクションのアイドル裏事情と戦略” “どうなる?日本!! 独特な風潮に染まったテレビ業界と更に深刻となる少子化問題” “先進国日本が認めない愛のカタチの行方。どうなる?どうする?人気アイドルの恋” “おねぇ様が斬る!ニューハーフ、オカマちゃん、100人に訊きました。話題のアイドル都ルナとイタチの関係について” 恐らく、明日からはそうした雑誌の見出し広告で電車内が賑わうだろう。 あの番組を最後まで観ちゃいないが、オビトの売り込み戦術として十分、有り得る展開だ。 今やスキャンダルさえ、良き宣伝となり歓迎されるから事務所にとっては有り難い。記者会見を行えばたった数分で数百万の利益が見込めるしな…。 映画の話題作りにスキャンダルはつきものだ。 世間に飽きられた頃には、次なる展開で売り込んでゆく。 アイドルとして完全に売り物にならなくなったら地方興行の旅に出すか、肉欲の餌食になるか…だ。 華やかな表舞台と、浅ましい裏舞台が一体となる世界。 芸能関係に限らずとも、社会とはそういうものだと弁えれば、夢も何もない。 だからか、現実と仮想なるものが混沌となるのかも知れない。 ボーカロイドなるものが大ヒットしたのも、こうした風潮からだろう。 仮想なるものは、どんなに時が経とうと、その姿形をとどめ、裏切る事のない妄想を育み、いつまでも己の思うままとなる。 都ルナのようなビッチになり下がる事はない。 他人の妄想の掃き溜めとなってそうなったとしても、それは己の領域とは違う別物だと区分してしまえば済むからな。 「二次元の方が、遥かにいいかもな…」 あの女子高生やら女子中学生を中心とする部活動的なノリの人気アイドルグループを出し抜いて、トップアイドルとして君臨したのは、性別すら公表しない謎のアイドルとの物珍しさもあってだろうが、大半は男女問わずと惹きつける本質的な魅力と、アングラとされたものが表面化して、時代のニーズに叶ったからだろう。 俺もそうした一人に過ぎない。 何が初恋だ。 何が運命だってんだ。 いとも俺をあっさりと裏切り、イタチなんかにホイホイしやがって! 明日からは、ポータブルゲームの仮想なる女を俺好みに調教してみようか? 奴らは決して、ビッチなんざにならず、忠実に俺を愛し続けてくれるからな。 [*前へ] [戻る] |