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飴と鞭

「次のモードに切り替える…」

200発くれえ撃ち終わって腕がしんどくなった頃、サスケがそう言って、パソコンを操作した。

次に進んでくってのが単純に嬉しかった。

(もしかして、もしかすっとオレってば案外センスあるんじゃね?)

自負してニヒヒと笑う。

スクリーンに映ったのは相変わらず動きはしねー影絵みたく真っ黒な人型の上に、ただ追記しましたーってだけな感じで、ゆっくりと点滅を繰り返す赤い光と英文だった。
あんま進んでない感じがするってばよ…

「なんて書いてあんの?」

父ちゃんに似て、髪や瞳の色はこんなんでも、オレってばれっきとした日本人だかんな!
だから、日本語以外はノーサンキュー!

「赤く点滅した場所を的確に撃て…」
「チカチカして見にくいんだけど…」
「点滅が小さくなった時、その一点に意識を集中させ、次に点滅が広がった時に撃てば要領を得やすい。やってみせるから貸せ。」
「うん。」

拳銃をサスケに一度預ける。サスケをじっと見る。いとも簡単に指示された場所の見事ド真ん中へとヒットさせて、オレへと拳銃を投げ返す。

「点滅内に撃ち当たれば次の指令へと進む。基本は同じだ。やってみろ。」
「オウ!」

オレが狙いを定めて構えようとしたた時、サスケの携帯がポケットから鳴り響いた。
サスケがいそいそと部屋を出ていく。
オレはサスケが見てようがいまいが関係なくと、一人で練習を続けた。

何発か撃って、やっと点滅する枠内に当たるよーにはなった。コツを掴んで次の指令へと順々に進んでったんだけど、どうもサスケみてーに狙ったトコ、ピッタシど真ん中ってな風には一度も決まらねェ。

数打ちゃ当たる的なもんで、全然なっちゃねーんだって未熟なオレにもわかる。

「喧嘩だって弱かねーし、結構、運動神経だっていいほうなのに…」

焦ったってどうしようもねーけど、まだまだまだダメすぎってのを自覚すっと、やっぱイライラして気を揉んじまう。

実戦となったら、この銃も本物で、ちゃんと弾も出る。
撃つのも、こんな真っ黒な人型のもんじゃなくて、動きもある生きてる人間だ。
しかも、相手も同じように拳銃を持ってて、オレを狙ってバンバン撃ってくるに決まってる。
それもサスケと同じプロか、マフィアの連中だって思う。
真っ黒な格好したあの怪しいナリからしてもそれっぽいし、女、子供にも容赦ねーし、まず間違いねェ。
そしたら、復讐するどころか逆にオレも……――

集中、集中…、もっと、もっと、集中しねーと!!

「お前らなんかに、殺られてたまるかってんだ!」

オレが家族の敵をうつ。
必ず!

気を引き締めて引き金を弾く。

「やったァ!一発でド真ん中だってばよ!」

よっしゃあ!とガッツポーズを決めた時、再び扉が開いた。

「今日はここまでだ。」
「え〜、せっかくコツ掴んだってのに…」
「続きは明日にしろ。」
「ちぇッ、つまんねーの。」

サスケは、ちゃっちゃとパソコンの電源を切って、拳銃をしまい、オレを部屋から追い出すようにして扉を締めた。

文句はたれたけど、オレってば、緊張感から解放されってホッとした途端、もよおしちまって、ダダッとトイレに駆け込んだ。

サッパリスッキリしてトイレを出ると廊下にまでいい匂いが伝わった。
居間に行くと、真っ黒な革張りのソファーの前にある低くて小さなテーブルの上に紅茶が用意されていた。

オレはそれに砂糖とミルクをたっぷり入れる。
レモンだけを紅茶に浮かべたサスケはそれを見て、いや〜な顔をした。
サスケは甘いモンが苦手みてーだ。

「なぁ、菓子はねーの?」
「煎餅ならあるが…食うか?」
「食う食う!ちょーだい、ちょーだい!」

戸棚から出した煎餅が皿に並べられ、オレの目の前に置かれる。手焼きみてーでうまそう。
「いただきます!」と手に取って、バリバリと頬張ると醤油の香ばしい味で口ん中が一杯になった。

「うめーな!コレ!!」
「そうか。」
「サスケは食わねーんか?」
「ああ。」
「じゃ、ぜーんぶイタダキィ!!」

バリバリと煎餅を貪るオレを後目にして紅茶を飲むサスケ。全部それを飲み干さずに時計をチラリと見て立ち上がる。

「出掛けてくる。」
「どこに?」
「…仕事だ。」

支度を整えるサスケを後追い、顔を覗く。神妙な目付きから仕事の意味が知れた。
学校とかじゃなくて……だ。

「なあなあ、オレも一緒に行っちゃダメ?」
「駄目だ。」
「邪魔んなんねーようにしてっから…な?」
「駄目だ。」
「女の子カッコに着替えっからさ。」
「…………」

サスケは、却下だって言うみてーに、オレを無視して寝室へ入ってった。
モチロン、後追いするオレ。
サスケは、さっきの部屋へと繋がるクローゼットの反対側の扉を開け、服を脱ぎだした。
床に放られる衣服。
しつこく懇願しようとした言葉も失くして、オレはパンツ一丁となったサスケの体を見入ってた。
危険な仕事をしてるってのに、傷ひとつありゃしねェ。それほど優秀なんだなってのが言われなくたってわかる。

それに、腹もすげー割れてる…。
鍛錬した結果、筋肉がついちまったってな感じで、やたらムキムキじゃなくて、ボクサーみてェに無駄がねェ、スリムで引き締まった筋肉。
なんか、カッコイイ。
なのにサスケときたら……

「なっ!!」

オレはこの後、劇的ビフォーアフターを目の当たりにする。




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あきゅろす。
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