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秘密の授業

それ以上、何も語らない背中についてゆく。
廊下を渡り、寝室の奥へと進む。

クローゼットを開け、スーツをずらし、なにやらピッピとボタンを押す。

なんだろ?と首を傾げる。
スライドして開いた場所を潜るサスケの背中を覗き込むと、うちにはない間取りの部屋が目に入った。
ふつうとは違う業界のヤツらや、金持ちばっかが住むこの高層高級マンションは自由設計も売りなんだけど、こんなカラクリみてーな作りはココでしかないだろう。
分厚い鉄板に囲まれた空間も、マトモな業者を通さず裏取引をして特別に作ったみてーな感じがした。

窓一つないシェルターみてーな部屋の扉を締めると人がいると判断してか勝手にライトが点灯した。まるでSF映画やアニメ、ゲームみてーだ。

格納庫みてーな重厚な扉のダイヤルを回してソコを開き、何やら準備をするサスケを後目に、物珍しい部屋の作りに圧巻されて声もでねーマンマ、ただキョロキョロと見渡すばかり。

「まずは手本を見せよう。」

サスケの声にハッとして振り向くと、本物と変わらねー比重の拳銃を持ち、大きなスクリーンに映し出された標的へと焦点を定めているサスケの姿が目に入った。
人の形をした動かない立体画像に銃口を向けるサスケを見て、特訓開始と息を飲む。

ようは体感ゲーム機と同じ感じでやりゃあいいんだな。

オレは真剣な眼差しで等身大の人間の姿を映す大きなスクリーン画面上を見ていた。

「腹を狙う。よく見てろ。」

サスケの横顔を目に映して頷く。
サスケは、オレに伝えやすくわかりやすくとした動作で引き金を引いた。
ぶれるコトなく指定通りの場所が撃ち抜かれる。

「次は額…」

ちょうどデコの真ん中に焦点が移る。的確にそこを捉えては画面がまた反応した。

「今度は……」

次々と狙ったポイントを外すコトなく、仕留める。こんなお遊びみてーなモン、プロにとっちゃあ簡単で当たり前なんだろうけど、様んなってて、カッコイイなって思った。

「すっげー、すっげー!!さすがだってばよ!」

パチパチと手を叩くオレを見やるサスケは呆れたように息を吐き。使った本物みてーな形をした玩具の拳銃をオレへと差し出した。
それを受け取ると、昨日持った銃よか重たい。
サスケが持ってると小さく見えたし、軽そうに思えたけど、実際は違ってた。

「案外、重てーんだな。」
「慣れれば大丈夫だ。取り敢えずやってみろ。」
「うん。」

サスケは他にコレといったアドバイスもしねーで、オレの後ろに回った。静かな視線だけが背中にささる。
オレはサスケの真似をして銃を構え、胸に焦点を絞った。そして引き金をひく。

「うわ!!」

意外に固いバネ。手にも痺れが走った。
その反動からか、随分と的ハズレなトコに照射が当たった。

「な、…なんだコレ…。ゲーセンのと全然ちげーじゃん!!」
「当たり前だ。これは軍隊などで使用される本格的な訓練用だからな。」「何でそんなモン、公務員が持ってんだよ。この国って、軍隊を持たない法治国家だろ?いいのかよ…。」
「余計な事は気にするな。もう一度やれ。」

さっきと同じ場所を狙って撃つけど、当たりやしねー…。
足がふらついて、手がビリビリする。

「クソー!!、今度はちゃんと、当ててやるってばよ!」

ムキになって銃を構えると、サスケの手がオレの腰にしっかりと着いた。

「足幅のスタンスは平行に保ち、体の重心を真ん中に置くよう、腰を安定させろ。背筋はそんなに丸めるな。確りと足裏を床に着けろ…」
「オ、…オウ。」
「両脇を引き締めて腕を伸ばせ。そうすれば、自然と銃身が体の中央にくる。焦点を絞って顎を引け。」

オレの両腕に沿って伸びる長い腕。銃を構える手を包む大きな掌。
髪のテッペンから聞こえる声。
背中に触れる胸板。

学校じゃ、こんな風にくっついたコトとかなかったから、わかんなかった。見た目の細っこさからじゃ想像できなかった逞しさ。結構、コイツってば、鍛えてたんだな…。

「こ、こう?」
「ああ、そうだ。最初はこの体勢を忘れるな。」
「オウ!」
「焦点の中心より若干銃口を上向けろ。慣れない内は衝撃で銃砲が下がるからな。狙いが定まったら、人差し指だけの動きに頼らず、腕の内側に力を篭めて引き金を引け。」

ゴクリと生唾を飲み込んで、サスケに言われた通りにして引き金を引く。
サスケが腕を添え、後ろから体を支えてくれてたセイか、照射を弾いた衝撃で体がふらつくコトもなく、手の痺れも感じなかった。

「や、やったってばよ!」

サスケの手を振りほどく勢いで、バンザイってして喜ぶと、すぐに掲げた手首を掴まれた。

「当然の結果だ、サッサと次の場所を狙え。」

振り返ってムッとした顔でサスケを見上げる。

「ちぇッ、ちょっとは褒めてくれたっていいじゃんよ。」

オレを見下す仏頂面。
コイツは愛想ってモンが全くない。

「一人でそれが出来たら、褒めてやる。」
「絶対ェだな!頭撫でてニカッと笑って褒めんだぞ!」
「…ああ、出来たらな。」

約束を交わし、早速と誘導するサスケの指示に従い、10発、20発とスクリーンの標的に向けて拳銃を放つ。コツが掴めたと見計らったんかサスケはオレから離れ。
腕を組んで、射的の練習をする様子をただ黙って眺めていた。




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