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先生、お願い

昼飯を食い終わった途端、オレはサスケに特訓をせがむ。
すると、サスケは眉を顰め一度オレを見据え、カップコーヒーを一口啜った。それを静かにテーブルの上に戻して携帯電話を開き、片手で文字を打ち始める。

「暫く、ゆっくりしてろ…」

ガタッと立ち上がるオレ。他人ごとみてーに、しれっとした態度。しかも携帯打ちながらとか、マジでムカつく!

「そんな場合じゃねーだろがッ!」

「これは命令だ。俺の家で暮らす者として従って貰う。」

「昨日、あんなコトがあったばっかだからか、お前がオレに色々と気ィ使ってくれてんのはわかっけどよ。でも、そんなのオレにとっちゃあ、ありがた迷惑だってばよ!」

文字を打ち終わったんか、携帯を閉じてまたコーヒーを飲む。一向にオレとは顔を合わさねェ。
こっちは真剣だってのに。なんだその態度。

「…昨日は同情もあり、あんな事を言ったが、今は違う。お前はまだ義務教育中の世間知らずの餓鬼だ。勉強なら教えてやる。教育者としてな…」

「ふざけんな!!、学校の勉強なんて出来っかよ!同情すんならしたで別に構わねェ。でも、約束だけは破んな!」

カッとなってテーブルの上に登り、サスケの胸倉を掴んで怒鳴っていた。
約束が違う。ズルイと。
表情が変わらない顔を対面に仕向けて睨み、殴りてェのを我慢して。

「…暫くは此処で身を潜め、俺に仇討ちとした依頼をしろ。報酬はお前の身が安全となり遺産を受け取った後でいい。」

「ふざけたコトばっか言ってねーで、オレの話を聞けッてんだ!!」

「お前こそ、俺の言う事を訊いた方が利口だぜ?」

昨日と打って変わった態度にますますカッとなって頭に血を昇らせた。
なんなんだよ、コイツ。
とんだ嘘つきじゃんか!

「昨日も言ったけど、お前にアイツらを殺させやしない。オレが必ず、この手で復讐してやる!!って誓ったかんな。遺産とかもいらねー。欲しけりゃ、お前に全部やっからよ。その代わり昨日約束した通り、オレに殺しのテクを教えろ!!じゃないと通報しちまうぞ!!」

「フン、…一丁前に脅しか。やれるもんならやってみるんだな。」

冷淡にあしらう態度に熱くと漲る。
どうして大人ってのは、こう簡単に約束を破ろうとすんだろ。こっちはいつでも大人の言うことを信じてるってのに。
大人ってだけで、偉そうな態度で見下して、子供だとバカにする。
まるで、信じたほうが悪いって風に。

ド頭に来たオレは、拳でサスケの頬を思いっ切り殴ってた。
サスケは、避けもしねーでオレが放った怒りの鉄拳をマトモに食らう。

黒い目ん玉だけをオレに向ける横顔。一瞬、そうした口元がニヤリと笑ったように引きつった。

「…感情的になるのは分かるが、少しは冷静になれ。」

正面を向き直ったサスケはオレを取り押さえるコトなく、坦々とした口調を添える。
オレは長い呼吸を一つして胸倉から手を離して、真剣な眼差しでアイツの黒い眼をじっと見つめた。てめーの正当性を訴えるように。真っ直ぐにアイツを見つめた。

「…確かに今も感情的になっちまってっけど、昨夜は感情だけで誓ったんじゃねー…。一人にさせてくれたベッドん中でよく考えて決めたんだ。葬式にも出らんねーオレが、死んだ家族にしてやれんのは、アイツらをぶち殺して地獄に堕としてやるコトだってな。父ちゃんや母ちゃん、まだ小さかった木の葉丸の無念を早く取っ払って、家族みんなが安心して天国にいけるよーにしてやんねーと、ってさ…」

「………。」

「…それしか、オレには出来ねェ。だから、その努力だけでも一刻も早くからしてーんだ。…時間がかかんのわかってから。それと、人を殺そうってするコトで、逆にてめーを危険に晒すってのもわかってるつもり。人殺しってな罪を一生、てめーの中で背負わなきゃってのもな…」

伝えたい決意。泣かないって決めて枕を涙で濡らし、チョコの袋を握りしめて眠った夜。
泣き明かしたましたってな証拠の腫れぼったい目。

「こんな顔はもう見せやしねーから、安心しろってばよ。うちは先生。」

サスケに全部の思いを告げてニッと笑う。

「後戻りは出来ないが、いいのか?」

「なーに言ってんだってばよ。だいたい、いいだしっぺはお前だろ?
覚悟がなきゃ、最初にお前に依頼してらァ!」

「…非情になれるか?」

サスケの神妙な顔。眼差し。重たい空気が逆巻く。そんな中、オレはビビるコトなく笑っていた。それは強がってとかじゃなくて、自然としたもんだった。

「ああ、プロだかんな。当たり前ェだ。」

サスケは、フッ…と笑って立ち上がり、テーブルの上を何事もなかったようにキレイに片して、居間のドアノブに手を掛け、振り向かずに「こっちへ来い」とだけ言った。




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