誓い
このマンションは全室防音で、防犯設備は万全だ…。
部屋のブラインドを全部下ろして、僅かな灯だけにする。
「これからに備えて準備をする。」と言い、サスケは寝室へ向かった。
何をしてんのかは、わからねェ。
扉に耳を澄ませたって、全室防音だから無意味だ。
「これから…」ってのは、オレと生活を共にするタメに必要な手段をサスケなりに踏んで、そう言ってくれたんだと思う。
オレが生きて、復讐を遂げるにはサスケに全部預けて任せるっきゃねェ。
数10分後、サスケが居間再び現れる。
不法所持とされ、持ってんのが見つかっただけでもブタ箱入りのモンをオレに手渡す。
正しい持ち方を簡単に教えてもらう。弾は入れないまま。
オレに預けた拳銃は女の子でも撃てる小さなモンだと言う。
しかも消音。
オレんちの様子を知るコトなく、空砲を放っているとインターホンが鳴った。
玄関の外で作動してる防犯カメラのモニターに二人の警官の姿が映る。
何もわかんねー弟は無理として恐らく父ちゃんか母ちゃんかが作動させた警備システムのおかげで警察が来たみたいだ。
サスケは玄関を開けず、インターホン越しだけでモニターに映った外の警官のいくつかの質問に「防音壁のため銃声すら聞こえず事件は知らない。」と話した。
このマンションには身分や地位が高い人や芸能人といったプライパシーを晒すのを嫌う人達が住んでいるからか、顔を出さなくても疑いなくとコトをえたようで、警察はすんなり現場に戻ったらしい。
警察が現場捜査をする外で、マスコミからのモンだってわかるインターホンの呼び出し音が鳴った。けど、それには一切応じず……
その何時間か後で、テレビをつけっと速報と入ったニュースが流れた。
番地も建物も伏せた映像が映り、父ちゃんの名前と顔だけが大きく報じられた。
“名誉ある賞を受賞した小説家、波風ミナト氏、その一家殺害事件…”
オレのコトは、行方不明だか何だとかは報じらちゃいねー…――
どんな手を使ったんかはわかんねーが、サスケが早急に裏から手を回したんだと訊かなくても知れた。
「サスケ…」
「なんだ?辛いなら消すか?」
「……ううん。大丈夫。」
「……飯はどうする?軽く何か食うか?」
「…いらない。」
「気が向いたら食えばいい…。」
テーブルにはいつの間にかラップで包んだ握り飯が置かれていた。
「…ありがと。」
サスケの優しさが身に染みる。
元気ださなきゃ…って、一つだけ手にして、一口だけ頬張る。
口ん中でホロホロと崩れる飯を噛み締め、煎れたてのお茶を啜る。
一瞬だけ見たサスケの柔らかい笑顔。
初めて見た表情に胸が暖かくなる。
「…ごめん。ありがと…」
そう言ったオレに、サスケは何も言わず。
ただ頭をクシャリと撫でた。
ぜってーに、立派な殺し屋んなってあの二人に復讐する!
だから、犯人が警察になんか掴まんないコトを心底強く願う。
一口だけの夕飯を終え、広いベッドの中で一人、外国の横文字が並んだチョコレートを手で包み、空の拳銃に頬を預け、銃鉄を濡らしながら、オレはそう願い、誓っていた………――
必ずオレが!と、強く強く…―――。
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