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広げよう、友達の輪!

続かない会話。
不穏な空気も心苦しい。集まった輩の誰もが、その重圧には困惑していた。

「そんじゃ、オレらそろそろ行ってくっから。またな!」

ばつの悪さを読み取り、早く行こうと責付くナルトが俺の腕を引っ張る。時間を気にするよりも、この場から逸速く退散する事を望んで。

「オウ!サスケもまた気軽に遊びに来いよ。いつだって歓迎するぜー!なあ、赤丸!」

「ワン!」

キバの懐っこい笑顔と明るさが有り難く。釣られるかにフッと笑う。

「今度来る時は、東京のオイシイお菓子をた〜くさんもってきてね。そしたらお礼に新鮮な焼き肉をご馳走するよ!」

新鮮な焼き肉?
チョウジの発した可笑しな表現に眉を顰めた時、シカマルが俺の前へと進み。此方を一瞥しては、もたつく様子で口を開かせる。

「まァ、こんなド田舎まで出向くのはめんどくせェだろうけど、アイツらもああ言ってるし、何よりナルトが喜ぶしよ。…だから、また遊びに来いよな?」

「…ああ。」

「ホ、ホントか!サスケ!!」

皆の辞令に応じた軽い返事にナルトが食いつく。俺の肩を掴み、大袈裟に揺さ振る。
嬉しそうな笑顔は期待に満ちている。

「…まあ、お前さえ良けりゃ‥な。」

「全然いいに決まってんじゃん!!」

体の揺れが止まったかと思えば、今度は息が詰まるほどの強い力で抱き付かれた。それだけ感銘したのだろうか。だとしたら大袈裟な奴だ。

「オイ、…ナルト。離せっ、苦しい…。」

苦しいと言ったのは嘘だ。本当は、こうした戯れに慣れちゃいないがため、照れ臭かっただけだった。どう振る舞っていいかがわからねェ。

「わりィ、わりィ!
またサスケに逢えるって思ったら嬉しくて、…つい。」

突発的な行動を謝罪するも、馴れ合う腕は力強さを増した。纏わりつく小さな身体。ヘンな緊張感に見舞われてしまい全身が強張る。伝わるナルトの感情と温もりをどう捉えたら良いのか解らない。振り解く事もできない。というか、したくない。綱手に辱めを受けた時には、なかった擽ったい感情に鼓動が早まる。

「サスケの顔、真っ赤だよ。ホントに苦しいみたい。ねぇ、シカマル。」
バリバリと高カロリーの菓子を食うチョウジの何の気なしな指摘に頬の熱を感じた。意識すればする程、気恥ずかしさが増してゆく。

「ん?、ああ、…そうだな。」

シカマルは想い耽ったような眼差しをナルトに馳せながら、呑気なチョウジに相槌を打った。
切なさに溢れたシカマルの哀しげな表情に、頬の熱が引く。

何故そんな眼でナルトを見る?
明日、行われる事を懸念して…なのか?

多々と訊ねたいが、それは此の場に望ましくない質問だ。ナルトや皆が変えた空気をまた一転させたくはない。

「なあなあ、いつ来る?ゴールデンウイークくらい?」

幾らか密着を解いて、見上げるナルトの顔がシカマルを見ていた視界を遮った。シカマルとは正反対な楽しげな表情が増す。期待に満ちた無邪気な瞳に、出任せは利かないだろう。

「ゴールデンウイークは無理だ。」

「ん〜、じゃあ夏休みは?」

「…そうだな。夏休みにするか。」

「どんくらい、居てくれる?」

「…2日、3日くらいが妥当か。」

「えー!!短けーじゃん!せめて一週間はいろよ!母ちゃんに話つけてやっからさ!」

「…迷惑じゃないなら調整するが…」

「そんじゃ、決まりな!母ちゃんに言っとくってばよ!」

「いや、やはり旅館かホテルに泊まる事にする。お前の家に長居するのは流石に悪いからな。」

「旅館?ホテル?この里にあるのは民宿だけだけど、ソコじゃダメ?」

「泊まれりゃ別にどこだろうが構わない。」

「じゃあ、うちで決まりな!!」

「いや、お前の家じゃなくちゃんと宿を取る。民宿でいい。」

「ナルトんちが嫌なら、犬塚(オレ)んちに来いよ!無料(タダ)で泊まってていいぜェ!犬の世話とか手伝ってもらうけどなァ!」

「ダメダメ!キバんちはダメだってば!タダ飯をいいことにワイルドで肉食系な母ちゃんと姉ちゃんに喰われちまうぞ!」

「オイ、ナルト!そりゃ、どういう意味だァ?」

「そうだよ、気をつけた方がいいよ〜、サスケはイケメンだからねっ!」

「そうそう、チョウジの言う通り、気をつけた方がいいかんな!だから、見知らぬところに泊まるより、オレんちにしとけってばよ。母ちゃんにはオレがうまく言っとくから、な!?」

「……ああ。」

自宅に帰ったら検索して見付けるかと思いつつ、その場しのぎで二つ返事をする。
ナルトは「約束だ。」と言って、無理矢理に俺の手を取り、小指同士を繋ぎまた“指切りげんまん”をした。

「よっしゃ!!友達三人の前で約束したかんな!ぜってェだぞ!!」

「オレとシカマル、チョウジの三人と赤丸の一匹が証人だからな!夏休みになったら今度はオレらとも遊ぼうぜ!」

「将棋の相手なら、なってやっからよ。じゃあ、またな、サスケ。」

「甘くてオイシ〜イお菓子、期待してるからね?」

それから手を繋ぎ、シカマルとキバ、チョウジと別れ、目的場所である一楽に向かって歩きだした。
繋いだ手を先頭立つ軽快な歩調に合わせ、ゆらゆらと揺らすナルトの手の暖かさを心地良いと感じながらも、子供染みてると恥じ。誰にも見られちゃいない事を幸いとして抗う事なく。釣られるようにして、俺もナルトの掌を確りと握り、雪解ける田舎道を歩き続けた。


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あきゅろす。
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