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distance-8(side イタチ)


簡易的な事務処理をする為に通信を取り執務室とされた住居地の一角で夜を過ごして居ると突然、けたたましい物音が聴覚に飛び込んだ。

まさか…
上からの情報も何も伝達もなく
こんな時間に敵襲など有り得ん…。

しかし戦争だ、予期出来ない事も多々あるだろうと踏まえて我が部隊が本拠とする場所へ武装し急ぐ。

街中に倒れる敵と味方の者…



灯のない夜の歓楽街に緊迫が走る。


その中に潜んだ影、
敵か味方か皆目ならずに片手ずつに持ったマシンガンの銃口を向ける。

「イタチ部隊長…無事だったんですね。」

「サイか…」

声色から判別した輩とビルの陰に潜み一寸の間のみ安堵する。


「敵軍の部隊が突然本拠地に現れて信号も打つ間もなくて大変だったんですよ。」

「そうか、把握出来ずに済まなかった…。」

「ナルト君がいたら、解ったかも知れませんが、何しろ突然でしたから仕方ありませんよ。」

「ナルト君が居る居ないは別として敵軍の動きを察知出来ず指揮すら出来ずな俺の責任には違い無い……。残りの連中は分散してるのか?」


「はい、各小隊長達に従い街中に点在していると思われますが安否は解りません。」


「何か他に変わった事は?」


「本拠地はあっと言う間に完全武装した連中に包囲されてしまいました。…中にとんでもなく強い戦士が一人いて、一瞬の内に数多くの兵士達が、その一人にやられてしまいました。」


「…俺のように強かったか?」



「僕は戦車の陰に息を潜めて様子を観てましたが……恐らく。」

「戦車は…どうした?」

「乗る間もありませんでしたよ。せっかくおまもりを描いたのに……。」

「生きて帰れば…いつでも乗れるさ…」


サイと同時振り向き、マシンガンを放つ背中合わせとして互いを護衛しつつ…


サイは若いが
兵士として天才だった。

敵を片付け一度は発覚された場から離れ
戦闘特有とした殺気を嗅ぎ分けて街中を進む。敵を薙ぎ倒しながら………。





街の中心地に足を踏み入れた時、象徴とする橋の袂に背凭れ項垂らす味方兵の血塗れな姿を発見する。

安否を気遣い近寄れば両手は銃弾で機能を失い下がったまま…
既に息はなく…
喉の中央にはリーチリップ(殺人蛭)が刺ささり未だに血液を放出させていた。


リーチリップ……
鋭い鉄のストロー
此を刺されて直ぐに絶命する事は無く……
致命に及ぶ出血を伴うまでになっても尚、血を吸うが如くな様がアマゾンの湿地帯に住む殺人蛭に似てるとして特殊部隊でそう呼ばれる武器。


この卑劣たる手段を得意する一人の人間兵器の顔が浮かぶ。



行き過ぎた指導者
何人もの訓練者を残虐にも殺戮した彼奴………――。



恐らく此は以前から俺に挑発を向けていた大蛇丸の仕業だろう……


「なるほどな……、首謀たる敵部隊の長は人間兵器。人間兵器は人間兵器にしか倒せ無い。……サイ。」

「はい」


「奴を追うぞ……」


「はい」


細い鉄筒を外し仲間の屍から外すのが精一杯の弔いとして立ち上がり大蛇丸を追う事にした。


サイと行動を供にして敵を撃ち殺し、どの位の時間が経過しただろうか。


敵の数は随分と少なくなっていた。

恐らく残るは
大蛇丸の取巻きであるカブトぐらいだろう……


早く大蛇丸を見つけなければ、小鋭たる部隊は全滅してしまう…
幾ら優秀な兵士でも人間兵器には束になっても適わぬ…、大蛇丸は兵器としては優秀だ。他の仲間の安否が気掛かりで仕方無い。
気を張り詰めて居るサイも精神的に限界が近いだろう。


「少し、休むか?」


サイに問い掛け振り向いた此の時
大阪の名物とされた人形が突然、散弾銃で発砲して来た。
油断していた…
不覚、だった。

「……く‥…」

瞬時の散弾に防弾し切れず銃弾を浴びるサイの姿を即時に流して此のおどけた格好をした敵士のデビルズアームで仕留める。


世界で最大だろう威力を持つ弾圧で吹き飛ぶ銀色髪は元仲間だったカブト。


此奴もまた俺と同じくな人間兵器だ。


一撃にして、もう口を聞く事も出来ない姿と化したが解る。
…近くに奴が居る……と。



地に落ちるサイを抱き止め、ゆっくりと楽な体勢へと運ぶ。

「…すみません、…気が緩んでしまって…」
唇から流れる血液を指で拭い払い頬を撫でる、大丈夫だと……。

「謝るな。…隊員を守れ無かった俺が悪い…――」


「…イタチ、…隊長……――」


「余り喋るな……」


「…いえ、……話せる内に……」


完治も治療も困難で出来無い深傷……
時間の経過で召されるだろうとサイは己でも解って居た。


「貴方が………、ナルト君だったら……今、…どんなに幸せだろう…」


「…ナルト君だと思って良いぞ……」


「……気持ちは有り難いですが……ナルト君は……こんな厳つい皺睫毛じゃ…ありませんよ…」


「………――。」


「…おまもり…‥
置いて来ちゃったから…‥かな?」

涙と血を流すサイは呟く様にして
そう零すと咳込み、くすんだ血溜まりを吐いた。



「………――死ぬのは怖いけれど……このまま、この痛みに…もがき苦しみながらは……いや…かな。でも………――これが僕の罪………」


麻痺せぬ痛みは
相当の物だろう……

併し…サイはそんな表情を顔に出さず…――

「……お前に罪等は無い。」


額かかる前髪を払拭する様、撫でると半弧を描く瞳を瞬かせ生理的では無い雫を流した。

そして
星と月が見守る空を見詰めあげ血塗れの紅い片手を震えつ翳す。


「…ナルト‥…君…だ…‥――」


其の言葉と微笑みに誘われて夜空を見上げれば金色にも見える満月が煌煌と只静かに輝いて居た…。



「………今だけで‥…良いから――…僕だけ…を…見……て……‥」





月灯を浴びながらに
伸びた手を落とすと瞳を閉ざし……




サイは月に召されるかに静かに息を引き取った……

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あきゅろす。
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