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Lunatic gate-2


「うわああああ!!」

ナルトがベランダへ出る直前でサスケが大きな叫びをあげた。何事かと思い振り返れば、両手で頭を抱え込んで床に身を沈めるサスケの姿があった。

「なんだ!どうしたサスケ!!」

「どうしたじゃねーだろ?」

ゆらりと擡げた相貌は覇気が失せたもの。蘇った死者のように血の気が引き、蒼白なる色を示している。

「てめーがグズグズしてっから、墜ちちまったじゃねーか。あの崖から、燃えながらによ…。」

サスケは先程ナルトに伝達した状況とは異なる事を譫言のように綴りながら、フラフラとした足取りでナルトへと歩み寄る。

「どうしてくれんだ?、このノロマめが…――」

その眼は血走りて大きくとカッと見開き、瞳孔は黒珠を色濃く拡がり、逆に虹彩は窄まっており。精神、此処に在らずといった感じである。
常軌を逸するサスケの表情には流石のナルトも驚愕した。
ダラリと垂らした手の一方にペインティングナイフを強く握り、歩調に合わせて体を揺すりつ向こう正面から己へ近付いて来る親友を瞬く間も忘れ、半ば茫然自失となったような眼差しで眺めていた。

抜け殻のように精気ない足取りで、のらりくらりと至近にまで踏み寄ったサスケは、まるで物の怪にでも取り憑かれたような面妖たる様相でナルトを睨み、その胸倉をグイと掴みあげる。

「あれだけ頼んだってのに、何の役にも立ちやしねー…、だからお前はウスラトンカチなんだよ。」

そうした切迫した最中で在りながらも、昔から己のみに発する特徴的な揶揄をサスケが刻んだ事で漸くと己の存在を認識してくれたとナルトは胸中で嬉々とし、己内で意を定める。

「お前を…――、ナルト、お前なんか信じなきゃ良かったぜ!」

ナイフを持った手を勢い良く振り翳すサスケを避ける事なく、ナルトは寧ろ真っ向から受け止めるようにして立ち尽くしていた。そうしていたのは、己がサスケに出来る事として覚悟を決めていたからだ。

「!?」

事が起こったのは、まさにその刹那。
鬼鮫が咄嗟に背中からサスケを取り押さえようと突進したが間に合わず。グサリとペインティングナイフが肌に突き刺さった鈍い音響が轟いたのだった。


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