米食え!米ェ!!
「オイ、起きろ!飯だ、飯!!」
けたたましい呼びかけと体を必要以上に揺さぶられ、重く閉ざされた瞼を細くと開く。
「飯だから起きろってーのっ!」
…――、飯。……夕飯か。
確かに腹は減っているが、眠気の方が勝り起きる気力は皆無に等しい。
俺のライフは0だ。
糸程にしか開かない双眸を再び閉ざして、唇だけ辛うじて動かす。
「……後でに…する…」
「ああ゛?何だ、要らねーんかよ!?」
「……ああ。」
「朝飯も摂らねーで、山登るつもりなんか?」
何、朝飯だと!
少しと思って寝入ったが、そんなに寝ちまってたのか!
ナルトの発したその言葉に一気に目が醒め、飛び起きる。
「今、何時だ?」
「7時だってばよ。」
「バスはあるか?」
「もう今日はねってば。」
「!!?」
クソッ、また寝過ごしちまうとは……
何たるザマだ。
情けなさを通り越して嫌悪し頭を垂れる。
「ププ…」
「?」
「嘘だ、嘘。ホントはまだ夜の7時だってばよ!」
「え?」
「ギャッハハ!!こーんな単純な嘘にお前ってばコロッと騙されんて焦ってやんの!?」
「…くっ!?」
揶揄われたと分かった瞬間、妙な恥ずかしさに見舞われ。
ゲラゲラと笑い転げるナルトを眉を顰め窘めるかに睨みをきかせ見やり、語彙を噛み砕すかに喉元へとグッと息を詰めた。
こんなに他人から、揶揄(からか)われたのは初めてだったからか、何とも言えない複雑な心境に囚われる。だが、どうそれを表して良いのかもどう流せば良いのかも解らずな始末で、フンと外方へと顔を逸らして誤魔化していた。
「おかげで目ェ覚めたろ?」
「………。」
ああ、気分は最悪だがな…。
「んな苦虫潰したみてーなツラしなくてもいいじゃんか。――…って、あっ!!お前ってばもしかして寝起き超わりィタイプだとか!」
言われて見ればと視線をナルトへ戻す。
「…確かにいい方じゃねーな。」
「何か低血圧っぽいもんなァ、見た目からしてさ。まあ、とりあえず飯食って気分転換させろってばよ!」
「誰が気分を悪くさせたっ思ってんだ…」
「へへッ、まあまあ、そうムクれんなって。みんな待ってしさ、ホラッ行くってばよ〜!!」
ナルトは調子良く笑いながら、羽織った褞袍(どてら)の袖を掴み、強くと引き、廊下へと俺を連れ出しドタドタと引き歩いた。
「は、離せっ!!」
「いーじゃんか。サービス、サービスぅ!」
「何がサービスだよ…、ったく。」
俺の意向を通す気は全くないナルトの馴れ馴れしい態度には呆れ果て、「はぁ…」と溜め息を零すも、不思議と怒りという感情はなかった。
それよりも形容し難い擽ったさにも似た暖かさが、胸中に留まり自然と眉間が緩んでいった。
こんな風に他人に腕を取られた事も、こんな気分を感じたのも。また初めてだった。
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