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第一村人発見!

段々と近寄って来るその眩い光は、年期の入ったエンジン音と共に、立ち尽くす俺へ真っ直ぐ向かって来た。

振り返って往生したように立ち止まると、対面でゆっくりとそれは止まり。
運転する輩は不可思議な顔をし眉を顰め、そうして俺の顔を睨むかに見上げた。

「道路の真ん中でボサっと突っ立ってんじゃねってばよ!」

辺りの暗さとヘルメットを被ってる所為か、よく見えないが、背丈や声色からして……女か?

原付バイクを運転してるって事は、俺よりも年上なのは間違い。

この付近の住民だろうか?
とにかく、漸くと感じた人の気に俺は早速と安堵した。

「オメー、見かけねーツラだけど、余所モンか?」

「…ああ。」

「何で土地のもんじゃねーヤツが、こんなトコうろうろしてっかわかんねーけど、とにかく危ねーから端っこ歩けってばよ!!」

「…すまない。」

「ったく、コレだから余所モンは…」

フーッと溜め息を吐くとソイツは先行こうとスロットルを回し始めた。

「オラ、サッサとどけってーの!」

女の癖に口が悪いのは土地柄なのか?
そういや、あのバスの運転手も相当訛ってたしな。

「訊きたい事がある。」

「何?」

「暁雲村役場前ってとこへ行くには、この道であってるのか?」

「あってけど、こっから峠一つ越えなきゃだぞ。」

「…後、どれくらい歩けばいい?」

「うーん、そうだなァ〜、この夜道ん中だと、軽く2時間くらい?」

「そうか、わかった。」

「んでも、役場なんて終わってんぞ?」
「役場には用はない。」

「じゃあどこに…」

「南賀ノ神社…」

「なっ、南賀ノ神社っつったら、さらに山奥で真っ暗な細い道みてーなとこ、ずーっと登ってかなきゃなんねーじゃんか!、こんな時間から行くっつーのは絶対ェ無理だって!」

「無理は承知だ。」

「ったく、なーんもわかっちゃねーだろ、お前。コレだから余所モンは困んだよなァ。あのなァ、地元民でも、特に今の季節、まだ雪も残ってし、熊も冬眠から目覚める時期ってのもあって、夜にあんな山奥入ったら死ぬって言われてんだぞ!」

「…熊、出るのかよ。」

「おう。熊以外にも色んなの居んぞ!夜は皆、獰猛になってし、冬眠あがりはどいつもこいつも腹ァ空かしてっから、さらに危ねーんだって。」

「…そうか。なら今日中には無理か。」

「うん。」

土地勘のある輩さえも雪積もる夜の山間道を恐れるのなら、今夜は諦めて泊まる所を探し、明日にした方が賢明か。

コイツの口ぶりからして、明朝のバスに乗り、明るいうちに山を登り下りすりゃあ、危険はないみたいだしな。

「この辺りに旅館とかはあるか?」

「農家は一軒あっけど、旅館なんて駅まで行かなきゃ、ねーってばよ。」

「……本当に何もない所なんだな。」

「…あのさ。」

「?」

「お前さ、泊まるトコねーんなら、うち来っか?」

「…え?」

地獄に仏と言っちゃあ大袈裟だが、正にそんな様に感じた。

「旅館よか立派でキレーなトコじゃねーけど、よかったら来いよ!」

悪いがその言葉に甘えるか。


「ホラ、そうと決まったらサッサと乗れって!」

「あ、…ああ。」

気後れして、原付バイクの小さな荷台を跨ぐ。

「すぐだかんな、狭いのとさみィのは我慢しろってばよ。」
そう言って、ニッコリと笑うソイツの背中に掴まり、真っ暗な道を走っていった。


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あきゅろす。
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