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distance-6

夕飯の配給を利用して部隊の連中を呼び集め、今日から仲間だとオレを紹介する淡々とした低音の声。



自己紹介とかマジで
めんどい。

敬礼もせずぶっきらぼうに宜しくとだけ伝える。

噂には聞いてたろーがみんな初めてオレの顔姿を目の当たりにして意外と言った感じで、ざわめいた。



コードネームKyu-bi
あだ名は"死神"


オレに出会った敵は
必ず死ぬからみたい…――


誰かが揶揄を込めて、そう口にした事が
あっと言う間に広がり嫌なジンクスみてーにされちまった。

でも
本当にその通りだから否定はしねェ。



緊張した面で隊員達の敬礼と簡単な自己紹介が続く中、一人だけニッコリと微笑んでるヤツがいた。


「僕はサイと言います。君と歳は変わらないから仲良くなれるかも。宜しくね、ナルト君」

物腰は柔らかそーだけど馴れなれしいヤツ…



やっと開放され
みんなが飯を食うのを余所にして


交換日記を広げる。


もう交換日記じゃねーけどな。


何だか半端に余ったページがいやで、ただ単に文字を埋めてるだけなんだけど、何でかこうして文字を綴ってると兵器としての
てめーを一時でも忘れたよーな気がしてさ。

ちょっとだけ
ほんのちょこっとだけ心ん中の葛藤が消え
平和んなるんだ。






「何してるんです?」

ひょこっと覗いた顔に驚いて両手で日記を伏せる

「うわァ!!な、なんだてめーはッ!アッチ行きやがれ!」


「フフ‥兵器でも慌てるんだ?」


「なんだと…?
てめー、もういっぺん言ってみろッ!」

「名前で呼んで欲しいなァ‥サイってさ。呼んでくれたら…もう一度言ってあげるよ、…ナルト君」


くすりと笑う声
気安く叩く肩
こいつムカつく。


「てンめェ…オレに喧嘩ふっかけるなんて、いい根性してんじゃねーか!」


「君に褒めて貰えるなんて光栄だよ、ナルト君。」

「褒めてなんかねーだろ!」


「いい根性だって褒め言葉だろ?」


「ちっげーよ!!バーカ!嫌味を言ったんだボケ!」

「何だ、違ったんだ…残念。ところで何書いてるのかな?」


「何だっていいだろ。お前には関係ねーんだからよ。」


「知りたいなァ‥。ねえ‥教えてよ。教えてくれたらアッチに行くからさ。」



何だこいつ
しつけーし、うぜー‥

「うっせーな!勉強してんだよ!!学校ずっと休んでっからッ!!」


「真面目なんだね?
兵器のクセに……」

勢いよく立ち上がりサイとか名乗るこいつの襟首を掴み
黒い瞳を覗きあげるみてーにして口許を
つりあげた。

「さっきから‥一体なん何ンだ、オメーはよ…。そんなに殺されてーなら、殺してやんぜ?」


「出来るんでしたら……――どうぞ、死神さん。」

満面な笑顔が余裕綽々としてて腹が立つ。
仮にも味方っつーコトで、出来る訳ねーとタカ括ってやがんのも憎ったらしい。


オレは兵器だ。
こいつの言う通り‥


いや
ヒトにも兵器にもなれねー半端なイキモン。
外見はヒトを装い
体ン中に、いくつもの危険な爆弾を宿した
どっちにもなれねー‥宙ぶらりんなヤツ。


サイに対しての怒りと
てめー自身の嘆きに頭ン中が混沌としてくると
オレはヒトとして
兵器として制御が効かなくなっちまって
勝手に体の一部が金属へと様変わり…――
中に隠してた危険物質達をバラバラと地に落としていた。


「…影が焦げ残る間も与えねーくれェの一瞬で、……この街ごと飛ばしてやろっか?」


昔、ナガサキやヒロシマに投下された"アレ"とおんなじ放射物質が中に入っていると知らせるマークがついたカプセルを発動させるスイッチはオレの意思だけ。


もう、どうでもよくなっちまってた。

想うだけでも大丈夫だって言い聞かせてきたけど

消去した映像の一部が消えなくて……


想い出して

つらくなって

忘れよーとして……




忘れらんなかった。



溜まる罪悪感
懺悔する日々…‥

ヒトとしての気持ちを歯止めたつもりが全然なってなくて
ちぐはぐなクセに……冷酷なフリをしてきた。



終わらない戦い


戦争と言う名の大量殺戮に嫌気がさしてた。


とっくの前に……


「…ナルト君、…いえナルト少佐。大変申し訳ありませんでした。」


「今更、謝ったって、おっせーンだよ!ボケがぁッ!!」


「失礼…しました。」

敬礼しながら下げる頭…


落ちたモンが
サイの足元にまで転がり周りを囲い
動けねー状況は掴んでた襟を離して
青褪めた顔を遠のけても変わりゃしねェまんまだった。



「そこ迄だ……ナルト君。」

声のする方向に眼玉を流すと
片手にした大きな銃の口径をオレにと向ける

アイツによく似た
男の姿が映った。








「……オレに脅しをかけるなんて…‥面白れェコトしてくれんじゃん。」


あんなデカい銃の引き金を片手引いたら
銃圧の衝撃で腕痛めんだろーし
弾丸の方向だって定んねェ。

オレはそう見越して脅迫だと決め、せせら笑った。



「生憎だが…脅しでは無いぞ。
………此の銃は俺専用に開発された物、故に俺は此を片手でも熟なす…──」


「へっ…
ハッタリかましてンじゃねーよ。」






「人は…尋常では無い過酷な鍛練と学習により非情と化した兵器にも為れる……──」



「………なに?」



「工学や科学…
或るいは化学等で造られた物だけが"兵器"では無い……」


「へー‥アンタも"兵器"なんかよ。そんじゃ、試させてもらおっか?……生身の兵器の力ってヤツをよ‥」


「フッ……良いだろう。此の部隊を街を全滅させる訳には行かないしな…。」


こいつならオレの葛藤がわかるハズ…―――
仕方ないと言い聞かせて行き場のないものを逃がし、やりきれない感情を乗り越えたんだろーから……──



「足元にあるコイツらが作動しちまうかどーかは、テメーの腕にかかってる。同じ兵器としてオレに勝ちたかったら頭、狙っとけよ?スイッチを破壊しなきゃ…転がったモンをガラクタには出来ねーかんな。」




心臓なんか動いてねーから撃たれたって死にやしねェ…


プログラムを破壊するには脳ミソをぶちまげるしかねーんだ。





殺してくれ……




アイツによく似た
お前なら………本望かも知れない……


「………サイ」


「……はい。」



「…一歩足りとも其処を動くな……。じっとして居ろ…‥」



「…はい、うちは部隊長。」



「…!!?…なっ……‥
うちは……だと?」

アイツと同じ名字

よく似た顔

…面影


もしかしたら…

アイツの……―――





「……サス…ケ…‥」




覚悟しての挑発に
引き金の発条を引く指……冷たい鉛玉みてーな眼…


強靱な肉体と精神を持った者を世界各国から選りすぐって
さらに人間の限界を越えるだろう厳しい特殊訓練を受けさせ、
過酷さに耐え生き残った一部の最強な"人間"を作り
裏工作には裏工作で対峙していた風説が本当だったとしたら…


こいつは最強の人間兵器。


いや、そういう問題に関係なく……
あの眼は絶対に
"殺る"眼だ。




……オレはこの場で確実に死ぬ…――



それでいいと思ってたのにアイツを間際で思い出したら、




……何だか死ぬのが
怖くなっちまった。







もう
絶対に逢えない
守れない

そうなるんだと考えたら、どーしようって勝手に体が震え出す。


「……あ…っ、……う……ぁ…ーー‥」




「リトルボーイ」と呼ばれる手のひらにすっぽりと収まる小さな核弾が点在する地にヘタリと座り込み身を屈め、頭を丸め押さえて掻き乱し……



「うわぁあああ――…!!!!…サ…スケ、…サスケっ………━━
助けろってばよ!
サスケェェ━━━━ッ!!」



狂ったように取り乱して
空に響くほど……

アイツの名を呼び
縋った声で泣き叫んでいた。"リトルボーイ"のスイッチをoffにしたまんま……















命を平然と殺るクセに"死にたくない"
と喚くオレは…‥──



卑怯で極悪で最低で…
中途半端な偽善者で…



そんでもって……


世界一の弱虫だ。











「僕も‥
………怖いですよ。」


掻き乱した髪を整えるみてーに落ちた手。


見上げると嫌味みてーな作り笑いじゃなくて……

「死ぬのが怖くて生きたくて人を殺してる………。敵と僕自身に言い聞かせてね。」



「俺もです!」


「自分も……」



サイと同じだって連なる声はオレへの声援になっていた……




「この前の札幌での出撃の時、自分はナルト君に助けられました!」

「俺は九州の時から自衛隊に所属しましたが、ナルト君のおかげで人を殺めないで済みました。」


「ナルト君がいるから安心して戦線に立てるんです。」


「ナルト君がいなかったら自衛隊は……いえ、この国はとっくに壊滅してたと思います。」


「…‥……え…?」

覚えてもねェ面々が
オレに礼を言い……


生きててよかった‥と口にした。







驚いた……




まさか感謝されるなんて思わなかった…"兵器"だから…──





「…あ、――…ありがと‥。………なのに‥オレ…………───
ごめん‥」


「無暗やたらと人を殺める兵器じゃない"ナルト君"を信じてたから、逃げようとはしなかった。謝るのも感謝をするのも君じゃない‥――僕の方だ。」


絶やさない微笑みを湛えながら身を屈め
オレの小脇へと手を運んだサイを頼りに立ち上がり
周りを取り囲む仲間の達の輪へと歩いた。



「…知らなかった恐怖を知り、強さを得たならば…其れこそが"本物"だ……」



デビルズアームと呼ばれる独特の拳銃の口径の引き金から指を離して、空砲を撃つ。

それをホルダーにしまいつつ通り縋る際に刻まれたイタチの言葉に瞳を狭め唇を噛みしめる。






強くなる。



誰よりも強く…――



人間として"成長"したい。


そして



オレの願いと祈りを
貫き通す。



ぜってーに‥…!!











「しつこいようだけど、さっきのノートって何?」





サイ…つったっけ、こいつ。


本当にしつけェや‥




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あきゅろす。
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