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深層



『私は報われなくてもいいから、サスケくんが好きだった。だから、サイの気持ちは受け入れられなかったの…』

『………。』

『それでもサイは、サスケくんの代わりでいいからって、強引に私を……――』

『…わかった。もういい。』

『でも、サイだけを責められない。私は確かにサイにサスケくんの面影を重ねていた。どことなくサスケくんに顔立ちが似てる事もあったから。…だから、サイに抱かれた時も、ついサスケくんの名を呼んでしまったの。』


サイはそれを承知でサクラを抱いた。だが、心までは手に入れられない切なさに駆られ、葛藤し続け混沌となり、改めた感情を乱してしまった。そして、過去の誤った感情を再び彷彿させ、サクラの全てを奪おう試みたというのか。

『ケジメをつけたい…って、サイに呼びだされてアパートに向かったの。そしたら見た事もない車に追い回されて。必死になって逃げ回ってた所に偶然サスケくんと出会い、思わず助けを求めてしまったんだけど、それが取り返しのつかない結果になってしまった。』

サイが運転してたとは、殺される寸前までサクラは知らなかったと瞳を伏せる。
俺に助けを求めなければ、巻き込まずに済んだと後悔の涙を流した。


『……こんな事になってしまったのは私の所為よ。…謝って済む問題じゃないけど、…ごめんなさい。』



深ければ深い程、愛憎は増し。
感性が豊かな者ほど、直情径行に至る。
裏切りを許し難くと報復するのは信頼が高い故。
素直な者ほど情緒に不安をつけ、感度を狂わせてしまうのだろう。

だが、不徳な過ちを犯したのは間違いだ。自己中心的な愛情を求めて命を殺めたサイに同情の余地などはない。

『サクラは決めたんだな?』

『…ええ。』


『だから奴の傍にいる…』

『……そう、ね。』

『…俺は、俺の生活を奪った奴が憎い。』

「ニャアッ!!」

俺を睨み、忠告するかに鳴いて直ぐ、ナルトは据えた視線を向こう部屋へと変え、バッと立ち上がったかと思えば即座に襖前を陣取った。
ナルトの様子が気になり、腰を上げ襖奥の方向へと見やる。
サクラも身構えるように立ち上がって、襖が開く音に唇を噛み締めた。

「あ、うちだったんだ?」

事を済ませのか、衣服を整えたサイが敷居を跨ぎ。跳ねるように後退しながら鋭い視線を送るナルトに不思議そうに問いかけ。全身を張り詰めて威嚇するナルトへと微笑み、“おいで”と呼びかけるように片手を伸ばした。

「フゥワァアー!!」

「しばらく見ないうちに随分、大きくなったね。」

まるでナルトと以前出会ってたような口振りをし姿勢を低くして距離を詰め。ナルトの顎下へと更に手を差し出す。

「わざわざ遊びに来てくれたんだ?」

「シャアアー!!」

ナルトは気が高ぶった声を発した刹那、目下に迫ったサイの手の甲を長く伸びた爪を立ててガリッと引っ掻いた。

「痛ッ!…相変わらず元気がいいね、キミは。」

「フオォーー…ン」

四つに這う足に力入れ踏ん張り、激しく逆毛を立て低く唸る。威嚇を増すナルトとは反対にサイは穏やかに微笑み、ペロリと引っ掻き傷を舐めてはズボンの後ろへと反対側の手を回した。

「可愛いよ。大きくなっても凄く、キミは可愛い…」

不適に持ち上がる口端が不穏な空気を招く。
俺はナルトの身に危険を感じ、咄嗟に前へと踊り出てサイを睨み付けた。

『ナルトに手を出すな…』

偶然なのか、目を凝らすサイと視線が搗ち合う。
しかし、それは瞬時の間のみと通り過ぎた。

どうやら、奴の標準はナルトに絞られているようだ。

「フウゥ〜…」

「小さなキミの首を絞めた、あの時から決まっていた……」

『!?』

『いけないっ!!』

サクラがサイの背後に回り込み、取り押さえようとしがみついたが、幽体の身は擦り抜け。実体を捉えられず。
カチリとした金属音を放ちて、飛び出したサバイバルナイフを翳すサイの腕が振り挙がる。

「キミもボクのもの…」

電灯に光る刃物から俺の背後にいるナルトを守りたい。その思いが湧き上がった瞬間だった。

「え?」

『サスケ!!何やってんだ、てめー!』

驚愕して目を見開き動きを止めたサイの感触が掌を通して伝わり。ナルトの鳴声が荒々しい言語へと変換し、サクラの姿が視界から消えた。





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あきゅろす。
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