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言及



見慣れた景色をゆったりとした歩調で過ぎ行くナルトは、俺が住んでるマンション脇の割と広めの道路挟んで対面にある駐車場すらないアパートの階段を上り始めた。

こんな近くに住んでたとは思いも寄らなかったが、この位置ならある程度、俺の素姓や行動を知る事が出来るか…。

部屋に通す事は一度もなかったが、数度、用があると勝手に訪ねてきたサクラとマンションの敷地内にある公園で話をしたりした。

その時にサイはサクラと出会い、後に二人は付き合ったのだろうか?

小学舎から大学まで同じだったサクラに恋愛感情はなかった。
昔からただの級友としか思えず、長きに渡るサクラの気持ちに応じる事は出来かった。
只の一度すらも…

そんな風にサクラとの経歴を浮かべつつサクラへの思いを踏みしめるようにゆっくりと階段を登りきると、真ん中の部屋の扉前でナルトが佇むように座り込み、その部屋の主を睨むかにドアノブを見つめていた。


『サスケは手を出しちゃダメだかんな…』

「何故だ?」

『情念を抑え切れずに手ェ出しちまったら、相手を“呪い殺す”ハメんなっちまうから。』

「…わかった。出来る限り約束しよう。」


『オレが絶対ェ、お前を守っから……』

「何だ?…何て言ったんだ?…ナルト。」


「ニャアアー!!、…ニャアーン!!」

『ナルト!オイ!』

“特別な時間”はまだ半分近くある筈だ。

なのに鳴き声しか聴こえないってのはどういう事だ?

「ンニャアァァ…ーン…」

威嚇した声色を発するナルトに手を伸ばして触れようとしたが、すり抜ける一方だった。

『クソ!…何故だ、何故…』

勢い余れば扉をもすり抜け、奴の靴が並ぶ玄関内へと入り込んでしまった。

どうしてこんな現象が起こったのか?と考える余儀も与えない程の異様な空気に誘われて段差のない敷居を跨む。

昼白色の電灯が照らされた台所続きの部屋には、所狭しと大小様々な絵画が壁に掛けられていて否が応でもそれらが目に入った。

褐色にも似た紅色の絵の具のみで絵筆を走らせた水墨画のような独特のタッチで、種別異なる様々な動物達が描かれたその絵はサイ自身が描いたものと思われるが、尋常ではない。
悪趣味の許容を遥かに越えている。

恐らく、この動物達はサイの手により絶命したのだろう。
残酷な扱いをされながら…



憐みよりも奴に対しての怒りが勝る。
奥歯を噛み締め、拳を握り、不穏な物音が聴こえてくる隣部屋へと感情の矛先を向けると、隔てる襖をもすり抜けていた。


其処で目にした至極、尊厳を無視をした光景が更に俺の感情を逆撫でした。





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