捜索
納得した様子ではあるがどことなく躊躇するナルトと共に玄関を出る。
アイツの居場所へと行くが為。
サクラがまだ魂の選択を終えていない事を願い、ナルトから聞いた話を伝えたく。
『なあ、あと半分もねーんだからさ。家に戻ってオレと一緒に過ごそーぜ。オレってばまだお前と遊びてーし…』
足元に柔らかな金糸覆う小さな身を絡みつけつつ、黒いズボンの裾に爪立て引いて俺の行動を止める。家に戻ろうとやたら嗾け、喚く。
俺とサクラを殺した奴の目星はついてたが、名を知ってる訳ではない。
面識はあっても一度見かけた程度だ、素姓は一切わからねェ。
なのに奴は俺の名を知っていた…。
そしてあの日、俺の付近を彷徨(うろ)いていたかのように、タイミング良くサクラを車で追い回していた。
俺同様の身となったサクラと会えたとしたら、身元は簡単に割り出せる。
しかしそう偶然的に会う事などないだろう。
根拠はないがそんな気がしてならない…。
思考をあれこれと巡らせ、明かり灯る夜の住宅街を歩いていると、何時の間にかあの事故現場まで足を運んでいた。
“轢き逃げ死亡事故発生現場、ただいま犯人捜査中。有力な情報提供に御協力下さい。”
街灯に立てかけられた警視庁の看板が更なる現実知らしめている。
遺体はないが雨水にも流されず、暗い路上に媚びりついた夥しい紅錆色のどれかは間違いなく俺の血液だ。
「…ナルト。」
『帰るんか!』
「身元さえ割り出せれば警察に報せられる。」
『…う、…うん。』
視線を逸らし、うろつかせてる瞳が怪しい。
「…お前、知ってんだろ?」
『し、知んねー!知んねー!!、知んねーってばッ!!サイがドコに住んでっかなんてさ!!』
「サイ?そいつが犯人なんだな?」
『ちげー、ちげー!!全ッ然ちげーよ!!
ホラ、このずーっと先のコンビニで売ってんだろ?サイコロステーキ入りの缶詰。ソレ食いてェなって、言おうとしたんだってばよ。』
「誤魔化す気か?」
『誤魔化してなんかいねーってばよ!!』
「別にお前に教えて貰わなくてもアレを選択すりゃ簡単に事が運ぶだろうな…」
『てめー、約束破る気だな!!』
「…お前次第でな。」
『う〜〜……―――、わかった教えっけど…』
酷く困惑して出した答えは俺の望むものとなりナルトは俺を横切り引き返すようにして先頭に立って足止めた。『いいか、絶対ェに再生の道を選ぶんだぞ!』
振り向いて再三を言付けるナルトの瞳は至極真剣で、覚悟を決めたように凜と澄んでいた。
『こっから先、何があっても動揺すんじゃねーぞ…。』
「ああ、約束は守る。」
『本当に本当だな!!』
「二言はない。必ずだ…」
『よし。破ったら一緒に地獄行きだかんな…』
決意を深く胸に刻み、歩くナルトは後ろを二度と振り返りはしなかった。
尻尾を立て勇み歩くナルトの後ろ姿を眺め、ナルトの歩調に合わせ足を運んでいた。
こんな勇敢な姿は初めて目にする。
愛らしいペットと言うよりも誇り高き獣なようだ。
ライオンの子供に似た黄金の毛色が余計に野性味を際立たせている。
あまり見かけない種別と言う事もあり、「あの猫可愛い〜」とナルトを見やり近づこうとした奴らもいたが、そんな風貌を携えるナルトのオーラが、そういった輩を寄せ付ける事を許しはせず。
そうして着々と俺達は標的となる奴の許へと近付いていったのだった。
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