distance-4
「お早う御座います。ナルト少佐」
「今日の予定は…?」
「大阪での地上線隊との合流の後、米国からの要請出動が出てますが…」
「全部オレが、殺っからって伝えとけってばよ…」
「お早う諸君!」
「カカシ長官!お早う御座います。」
オレの取巻き達が一斉に敬礼をする。
オレは立ち尽くしたまま冷ややかな視線を向け瞬きのみを挨拶とした。
いつもの朝の光景……
「ん、お早う。ナルトも軍服が随分と様になってきたな?」
「…なぁ…」
「ん?…どうした?」
「もっと任務入れてくんねーか?」
「なに、足りないの?」
「合流だとか最近そんなんばっかじゃねーか。つまんねーんだよ‥はっきり言って…そーいうのがよ。」
「うーん、オレの一存ばかりじゃ決められないからなァ…」
「誰が決めんだか教えろ。直接交渉して来っから…」
背の高い胸倉を掴み寝ぼけたよーな眼面へ薄ら笑って「教えてくんなきゃこの場で殺すぞ」と小声を洩らす。
「あー‥自来也さんとか?後は内閣総理大臣?」
「自来也…ね。わかったサンキュー‥」
直接交渉しに行き終わったら予定通りに遂行すると伝達して司令塔の一室から離れる。
交渉は簡単だった。
みんなオレを怖れてっから。
それから大阪へと輸送される。
━━━sideカカシ
「……ナルト、お前変わったよな…」
「カカシ長官、自来也官房長が御見えです。」
「通して下さい。イルカさん‥」
「…何なんだ、ありゃあ……、わし達はどんでもないものを世に生み出してしまった…。恐ろしいのう…、まだ17歳だと言うのに……。あの…冷たい眼ときたら……」
「恐ろしいのは、アナタ方ですよ…。小さな身体にあんなものまで積み込ませたなんてね。」
「……――ナルトは我が国の"願い"なんじゃ……。ナルトが"夢"を実現してくれるハズなんじゃ…だから仕方なくなんじゃ。」
その思想が更に恐ろしいとは思わないのだろうか…との事は御老人には伏せて笑っておくとするか。
ナルトは
夜中に突然この基地に現れ、そしてこれからは任務に徹するからと言う条件と引き換えに故郷だけは戦時を匂わせない様、フツーの生活が出来る環境をと願ってきた。
ナルトが提示した簡単な条件は国として好都合この上なく
当然と受け入れられた。
その中にアイツの深い思いが伝わった。
守りたい恋人がいるからだろうと個人的に察し、アイツの行動を目で追ってきた。
ナルトは派遣からの功績を我が国に残し
軍を持たない
この国は遥か昔に勃発した戦争の時のように怖れられ、そして同盟国からは讃えられ
世界規模の戦争ではあるが被害は最小にととどめられていた。
他国情勢は酷い物だ…
ナルトは成長する兵器、我が国が誇る世界一の兵器……
最終兵器……だと誰もが認め、
現在ではナルトの手で楽に極楽浄土へ…などと願う兵士が他国には多々いるとの噂も多く聞く。
「まったく、いやなアイドルだよ…」
「ナルトの管理はワシも率先するとしよう。真っ先に筑波の研究所がやられたんでデータ不足な所はあるがのう…。」
「…そう言えばナルト専用の薬は後どれくらい残ってます?」
「なるべくなら、あの子のあの眼は見たくないからのう…、全部カカシに渡しておくから後でワシの執務室に来い。」
「…了解」
「さて、そろそろ御暇しようか。いや〜イルカくんの煎れたお茶は相変わらず絶品だのう!!」
「有り難う御座います!」
部下の肩を叩き高笑いして出て行くのを見送り席に着く。
「…カカシさん」
「……ん?」
「ナルトは…何だか以前の明るさや笑顔をなくしてしまったようですが……大丈夫なんでしょうか?」
「アナタも気になりますか?」
「……はい。」
「ほら、今は多感な思春期でしょ?だからさ一過性の……ーん‥そうだなァ。ま、春一番みたいな?」
「何です、それ?」
「現在はもうないけど、昔この国には"冬"と言う季節があってね。寒い冬将軍を連れ去る春一番という季節風が吹き荒れたそうです。ナルトは今、我々が体感した事のない"冬"と言う季節の中にて春を連れてくる準備を模索してる。春一番を自分の中に吹かせて、これからの身の振り方を定めようとしてる…なんて風に俺には思えるんです。」
「春一番という改革する嵐を自分に見舞わせ今の状況を変えたいと望んでるって事ですか?」
「オレ達もありましたよね…。何かもかも輝いて見えた時期……
その裏に潜む影……。それを自分なりに乗り越えてきた…」
「…確かにありました。何だか懐かしいです。」
ナルトの本心は
ナルトにしか分からない。
オレは何もナルトに指導なんて出来ない立場だ。
ただ
御上の命令に従い日々を送り
ナルトが出す"答え"を見守るだけしか出来ない。
ナルトが
九尾に食われるか
ナルトが九尾を食うか、それは………―――
ナルト
お前自身にかかってるんだよ。
「早く春一番が吹けばいいですね!」
「そうですね。」
「お茶、煎れ直しましょうか?」
「お願いします。」
ナルトは"生きよう"としている。
命を奪う自分を忌まわしいと思いつつ
命を守る宿命を知りつつ。
大阪にはアイツが居る。
優秀な部隊長であるアイツと接して
そこで何かが芽生えたなら、
……ナルトは………
「少し意地悪だったかな…。」
何も言わなかったけど、心境を変えた何かがあったんだろう。
サスケと何かが……。
記憶のチップの一部が破壊され
修復はしたが見つからないナルトの記憶。
その内容はそうしなければならないほど……だったと勝手に情景を描き、政府機関のみにしか働かない通信機能を操作しようと起動させた。
イルカさんが煎れてくれる、お茶を待ちながら……
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