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ミナト

おてんば姫さまが木ノ葉にやって来てから数日、数週間と過ぎた。

オレは相変わらず御守りとしての立場から抜け切れずにいた。

オレに興味を持ったこの破天荒な娘に毎日、忍としての教育を教えある程度の認識を伝える任務を終えてからも尚、散々追いかけられ付き纏われてるというのに何故か、酷く心惹かれてしまった。

それは
やっぱり赤子の時にクシナに植え付けられた、あの力によってなんだろうか。

いや、そうじゃない。

クシナ自身の奔放さや明朗な性格に魅了されたんだと思う。
しかしクシナは異性としてではなく、ただ単に身近で話しやすい忍と数多く接触したいだけと、クシナの内に潜む強大な不穏を解明したいだけで執拗にオレを追い回してるのだろう。

言わなくともあの娘は察知してる筈。

オレもそれを感じている。理解している、言われなくとも。

操る事は出来ないが、封じ込める力はある。それは多分、此の世の中でオレしか出来ない。


こんな思慮に重んじてと一介の教育係立場を弁えてか、常にクシナとの隔たりを打破出来ず、未だに胸を占める思いを告げられずにいる。
今日は別の任務を命じられ、他国へと赴きクシナとは顔を合わせてはいなかった。

木ノ葉に戻った時には疾うに陽は暮れ辺りは暗く。家の灯も消される時分でクシナも綱手様の隣で恐らく寝床に就いてると思われ、その屋敷には出向かず自宅へと急いだ。


「ハーイ、ミナト〜!遅くまでの任務、ご苦労さまァー!」

予想外の声が静まった夜の空間に響き見上げると、太い枝上に座り足をブラブラさせて両手を振り、オレに存在を示し伝えるクシナの姿が目にとどまった。

まさか、こんな時間になるまでオレの自宅隣の大木上で帰りを待ってたとか…なんて思うのは自惚れかな?


「危ないから手は振るな。君はやっとチャクラっていうオーラを認識したばかりなんだ。もしそんな高い所から落ちたりでもしたら…」

「きゃあッ!」

「!!!?」

言った傍からバランスを崩したクシナへと瞬身の術式を使い移動する。そして俺の腕内へと抱き支える。

「まったく、もう君って娘は……」

「ご、ごめんなさい。」

「君に何かあったらオレ、泣いちゃうよ?」

「責任取らされて?」

「うん、ご名答。でも泣くより早く首をチョンってされちゃうだろうね。」

「…そんな事になったら、私が許さない…‥…、本気で」


ヤバい、クシナは気がついてないみたいだけど瞳の色が変わった。
気付かれないように制圧の呪文を蚊の羽音ほどの声で刻み発動させる。
それからにっこりとおどけたように笑い
「なーんて嘘、嘘。君はちゃんとオレが守るから安心して」
「ええ、…もう、ミナトの前以外じゃ危ない事はしないって約束する。」

シュンと悄げる顔。くしゃりと長い髪の天辺を撫でる。抱き絞めたまま…‥


「わかってくれたならいいさ。それより、いつから此処に居たの?」

「ミナトに会いたくなってから…」

そう告げた唇を噛み締め見上げた顔は恥ずかしそうに白い頬へ朱が浮いて、丸く見開いた愛らしい瞳が長い睫毛数度閉ざされては開かれ、オレの顔を映し出す。

「…クシナ…ーー」

「…ミナ、…っんん」

艶やかの唇がオレの名を刻むより早く括れた細い腰を確りと抱き寄せ、強く引き寄せた唇を可憐な唇に重ねていた。

「ん、ん〜…‥っ」

添える手は拳を作りオレの胸をドンドンと叩く。
けれどお構い無しにクシナの柔らかな唇を啄んで舌を挿し入れ絡め取る。

胸板叩く拳は形を崩し、震えては身を寄せるクシナの身体。軽く頑なとなってる舌を吸って唇を離すとゆっくりと瞳を開き酸素を取り組むクシナ。
その頬へと手を伸ばし撫でつつ見詰め「好きだ。」と伝えた。

するとクシナは何も言わずに、オレの首根に両腕を巻き付け、辿々しくも自ら唇を寄せ、その柔らかさをオレの唇に弾ませた。


それが、クシナの答えだった。



「クシナ、…オレも約束するよ。必ずクシナに見合う最強の忍になるってね。」

「バカ、…もう私の中じゃミナト、あなたが……ーー」


月灯りを翳す樹々の葉が夜風にそよぐ中、クシナを強くと抱き亜麻色髪の旋毛上に何度となく唇を落とした。




その日の誓いを互いが守り抜き、数年が過ぎたある日。
オレは四代目火影に就任した。


そして渦の国の長であるクシナの父の元へと火影としての挨拶を兼ね、クシナとの婚姻を許諾して欲しいと請おうとした矢先、渦ノ国の当主自ら「我が娘、クシナを四代目火影殿の嫁に貰ってはくれぬか?」と先手を打たれてしまう。


事由は簡単だ。


波風の血系から続く封印力は、最強の尾獸さえも取り押さえコントロールし、もしかしたら分離をも出来る式をも携えている可能性がある。


うちは一族の至上にして究めた禍々しい写輪眼とは全く真逆となる神通力。
恐らくはそれを要してだろう。

そんな内需は関係無い。オレはクシナと一生を添い遂げられさえすれば…、と一つ返事で頷いた。


式はクシナの意志と情勢を重んじて二人だけで密かに。
入籍は現在は控えて後に…と、不穏な連中に情報を伝達させないよう配慮して。

クシナが渦の国の姫君である事を隠してるとの状況を崩す事なく、身分を隠したこうした内密的な婚姻はクシナと渦の国を護るためだった。

何かを算出して水面下で動向をみせる水影率いる里の忍に対して、クシナ姫は城の何処かに滞在しているとの偽りを継続させなけばならない。平和を願い中立する渦の国への警邏が強まる最中、一番安全だろう火影の身元下に置く事で万が一を避けられたなら…との逸史をクシナの父はオレに託したのだった。

勿論、クシナには全て内緒。

知ったら面倒が増えるだろうしね。

何より、今は真実を隠してクシナとの生活を楽しみたい。
クシナが強く望む事を叶えたい。


真実は後で知れる。
クシナは追及してた事柄を何年か先に体感する未来を変えたい…。


少し許りでも、ね。




それから、クシナとオレの未来がクシナの腹の中に宿る。
自来也先生が書いた小説の主人公以上に諦めない力を携え、逆境にも負けないで欲しいとの願いを託し、その小説の主人公の名前を生まれてくる子へと宛う。

クシナのお腹にいる、まだ見えもしない我が子へ。





やがて訪れた避けられなかった現実。
引き金は水影…いや、うちはマダラが弾いた。

オレの出来る事は里を護ること以上に
愛しい妻であるキミと、その意志とナルトを護ることだ。

生まれたばかりの我が子にオレは陽と陰に振り分けた“陽“を示す九尾を封印した。




オレとクシナの子だからこそと。


あの男が、
そしてあの男と血脈を分けた者が野望を捨てない限り、また再びと大きな戦乱を招くだろう。



…ーーナルト


君を狙って。

あの子を利用して…







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