サイ ナルト君の気配を追って後樹の幹裏に身を隠し、ナルト君の漏れた声を聞く。 サスケ君はダンゾウから暗殺すべきと命じられた人物。 ダンゾウには五代目側の内情を探るべくスパイのフリをして第七班に未だ身を置いている。 僕はダンゾウを裏切ったとは思ってはない。 ましてや、五代目側の完璧な味方ではない。 そしてうちはの敵ではない。 僕は僕の真実を求めて行動してるだけだ。 上層部の情報を有効に活用して。 本来の僕は誰なのか? 知るべきなのは当然と僕の意思を優先させている。 おかげで解った事がある。あの暁の面を被った奴から発せられた写輪眼が僕の記憶を少しだけ甦らせた。 けれど誰にも言えない 言わない。 ナルト君にも…ね。 ダンゾウは僕を利用した。恩を着せたカタチで。 でも僕は最初から何処かダンゾウを信じては居なかった。 何も心打たれず…だった。 ダンゾウの思想は 独裁者的なる危険なもの。 長きに渡り木ノ葉の地盤に根を延ばした ダンゾウを裏で見張って利用しようとしている人物がいる。 ダンゾウは気がついているのか、それは判明出来ないけど…確かにいる。 もしかしたら… その逆、なのかも。 うちはの末裔はサスケ君、一人ではない。 写輪眼というものは失われた血脈の色を濃く受け継いだからか、 その傾向はないけど 僕も確かに 忌わしいとされる血を紡いでいる。 あの写輪眼はカカシさんとは違ったもの。 うちはの者の、……あれは…幼い頃に見たものと同じ邪悪なる感じのものだった。 うちはの生き残りが何で暁に? イタチと何等かの関係がある者に違いはない。イタチを捕虜に出来たなら、その詳細の一角に触れる事が出来たかも知れないけど… イタチの気配は完全に消えた現在となっては何かに反応したカカシさんの情報が鍵になる。 恐らくイタチより先に消えた自来也様の気配は無駄にはしてないと僕は読み、何等かの方法で伝達された事柄が木ノ葉に朗報をもたらせた…… そして二つの情報を重ねた考察で新たな指令が下される…… サスケ君を公の命令として殺す事と 暁に狙われてるナルト君の護衛の強化に専念し暁を探る"蛇"とかいうサスケ君が作った小隊の動きを定めながら。 一方、裏部隊には自来也様が追っていた暁のリーダーの謎を的確とさせる明示を‥と要求する命令を下す…… そんなところかな? ダンゾウは議論後にどんな命令を僕へと下す? うちはを恐れ 千手の威圧下に置いて木ノ葉を繁栄させようとするダンゾウは僕がうちはの者だと言う事を知っている…だとしたら、 その目的は僕を利用した挙句に抹殺……といったとこだろう。 逆に 知らないで…だとすれば単純に裏で工作する要員だと割り切れる。 でも僕はダンゾウの思惑には嵌まらない。 絆、を手に入れた。 未だに代わり、だけれど。 サスケ君の代わり…… サスケ君の代わりなら、……ナルト君にサクラさんは…… 僕をどう見てくれてるのだろうか。 『サイ』は偽りの名前だけど 僕は偽りではなく…… ましてやサスケ君の代役でもない。 サスケ君は もう第七班じゃない。 僕が第七班のメンバーなんだ。 仲間…なんだよ? 完成させた あの絵本は 僕の新たな未来の兆し…… 現実を認めて 真実を解く…… その第一歩だった。 「…サイ?」 「…ナルト‥くん」 身を忍ばせていたというのに勘付かれるなんて僕らしくないほど心を乱していたようだ。 「…何してんだァ?こんなトコで…」 「少し外の空気に触れたくてね。」 ニッコリと笑顔を差し向ける。 「何かあったんか?……タダでさえ悪りィ顔色が真っ白だってばよ。」 作り笑顔の向こう側を覗き込むかに傾けた顔。 至近にはあるけれど 君の瞳に、僕は映ってはいない。 君は遠くにいる人物しか見ていない。 僕に似た顔の……── 「…サスケ君が帰って来たら、僕は第七班を離脱するだろうね。僕はサスケくんの代理…だから…」 「…サイ。…お前、ヘンだぞ?どうした?」 「それでもナルトくんやサクラさんは僕を仲間だと思ってくれるのかな?」 「お前は木ノ葉の里の仲間じゃねーか。何言ってんだってばよ。」 「じゃあ、僕が木ノ葉を裏切ったら? 君やサクラさんは僕をサスケくんのように追ってくれる? それとも……――」 「サイは…サスケじゃねェ‥。サスケの代わりなんかじゃねーんだ…。」 「……裏切って…上から任務だと命令されたら……――僕を‥殺すんだ?」 「おい!誰もそんなコト言ってねーだろがッ!」 掴まれた胸倉に篭る力 「どんな命令でもオレは仲間を殺すような真似はしねェよ。…一度出来た繋がりを断ち切るコトも‥多分出来ねェ。……オレが納得して敵だとしたら、殺すだろーが納得できなきゃ‥殺さねェ。」 己の意思に反しての命令には背くと睨む碧色の瞳‥ 「…僕が…映ってる。ナルトくんの瞳に…僕が……」 「なに当たり前の事言ってんだァ? 目の前にいるテメーの他に誰かが映ったら怖ェだろが!、……オレさ、お化けだとかダメな方だかんな‥」 「…ああ、うん、そうだね。」 僕はサスケくんを殺せと命令された。 サスケくんは木ノ葉にとって危険人物だからだ。 でも…… ナルトくんやサクラさんの気持ちを知って 僕の中で眠って感情が芽吹いた。 その先に潜むものが 何なのか知りたくて、僕は僕の意思で現在 ココに居る。 サスケくんを殺す気はない。 ナルトくんやサクラさんを哀しませたくはないから……─── 「……あ…。」 「どうした?」 「ナルトくんの後にいる髪の長い人、……誰?」 「……へ?」 左肩側の背後を指差し瞬くと慌てふためいて後に返りキョロキョロと目玉を動かすナルトくん。 「…だ、誰もいねーけど……ど、どこッ!?」 「左の肩の後に……ほら、女の子かな? 黒く長い髪を横にたらして…笑ってる──‥額当てしてるから……ひょっとして忍?」 「………━━‥まさか、それって…」 左肩を押さえて青褪める顔。背中をゾーとさせて固まった様子。 「…誰か殺しました?」 「…いや、オレは殺っちゃいねーし、墓もたてたし……ちゃんと成仏してるハズだって!」 「…あ、思い当たるんだ?」 「だから、殺っちゃいねーって!、オレだってなァ、サクラちゃんより可愛いって驚いたくれェだけど白は男で、そんであん時はサスケをよくも…って感じだったけど、色々あってサスケは死んでなくて……そんで!」 「言ってる事がさっぱりなんだけど…。 サクラさんより可愛い方が亡くなって惜しいと‥━━そういう事か。よし、サクラさんに訊いてみよう。」 「何を?」 「ナルトくんがブスなサクラさんより可愛い方を今でも想い偲んでるらしいけど……何があったんです?ってね。」 「うわァァアアアーー!!やめろサイ! サクラちゃんにフルボッコにされちまうってばよー!!」 サクラさんの元へと 向かう僕を追いかけるナルトくん。 今は、サスケくんの背中じゃなく間違いなく僕の背を追いかけている。 君はサスケくんを追いかけ真実を知るだろう。 そして僕は 僕であるために真実を掴む。 [*前へ][次へ#] [戻る] |