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そんなこんなで、やがて三人は大きな公園の入り口に差し掛かった。
春には桃色絨毯の敷かれるこの公園も今は深緑が鮮やかに生い茂っていて、蒼いさわやかな香りが公園内をそよいでいた。
公園に一歩踏み込んだ時から何かを気にしてちらちらとよそ見をしている葵に、
「時計台が…どうかしたの?」
時計台の方へ首を傾けた紫がぽつりと問い掛ける。
うん、と少し間を挟んだ葵は微妙な表情をしていた。
「…あのね。この前のすごい雨の日だったんだけど、白い傘が時計台の下にあってさ、その下に猫がいたんだ。誰かが雨避けに置いたんだろうけど。そういえばあれからどうなったのかなーとか思って」
「へえ。今時珍しい光景ね、そういうの」
「うん。自分の傘置いてまでなかなかできるコトじゃないよねぇ」
二人は立ち止まり、時計台に真っ直ぐ目をやっている。
「奇特な奴もいるもんだ」
二人の話に毛ほどの興味すら示さずさらりと言い捨てた聖に、
「あーぁ、どっかの冷血漢にも見せたかったしー。てか聖いつもここ通るじゃん。見た?」
葵が片手をひらひらさせて、まだ二人に追いついていない聖を招いた。
「さあ。知らん」
別にそこまで話題にするような事でもないだろう、とうんざりしながら、彼は嘘をついた。
「だよねー。聖って前しか見てないもん」
「くくっ、確かに」
葵の言葉に、紫が下を向いて吹き出している。
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