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「んっふっふ♪」

「河合さん、凄く楽しそう」

「だーってさ、ウチのガッコってあんな感じじゃん?打算なしで素を出せるようなコ、いなかったんだもんねー」

「…………。」

「こーいう機会でもないと、聖なんかゼゼゼッタイ付き合ってくんないしー」


弾む足取りの葵はスカートをふわふわと揺らしながら、心底楽しそうな顔をして鼻唄混じりに歩いている。

その横に立つ紫もまた、葵と同じく屈託ない顔をしている。その笑顔は至って自然だ。


「ユカリはまだこの辺に詳しくないかもしんないけど、駅前の四番街にね、超有名チェーンのクレープ屋ができたって聞いて、もぉぉゼッタイ行かなきゃ!って思って頑張っちゃったー」


そんな下らない目的で、徹夜の猛勉を惜しまないのかお前は。

喉元から出かかった言葉をかろうじて聖は飲み下した。


――例の葵との賭けとは、蓋を開けてみれば何の事はない、彼女が中間試験で総合十位以内にランクインできれば聖のオゴリで一緒にクレープ屋に行く、ただそれだけの事だった。

聖にとっては、そんな事の為に惜しみない尽力を果たす女という奴がまったくもって理解不能だ。

そもそも行きたいのならいつでも一人で行けるではないか。

そしてあの変な女がいるのは何故だ。

この二人、いつの間に意気投合したのだ。


「それにさぁ、クレープ食べる聖って見てみたいとゆーかぁ…そ、想像し…ぷ」


ウケる〜とか言いながら、堪えきれなくなった葵が口を押さえて吹き出している。
その一撃で聖は完全に興ざめした。


「こういうタイプの人って、案外と甘党だったりするよ」


落ち着いた口調の紫が、少し距離を置いて二人と歩く聖を振り返った。

目が合った一瞬、葵の死角を縫ってニタリと笑んだその顔が、いっそう憂鬱感を募らせる。


「…今回限りだからな。お前の天文学レベルの可能性の克服を一応は称賛しているんだ。でなきゃそんな所に行くか」


聖は不機嫌丸出しだった。



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あきゅろす。
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