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3


短い思案を巡らせながら、聖の視線が自然に横に流れていく。

まあ当然ながら首位は彼自身だったが――そこを見た聖の視線がはたりと止まった。

その視線の先に表示されていたのは、
二位 立花 紫 467点
であった。

背後から囁かれ嫌でも覚えさせられた名前。彼の後ろの席の、あの変な女だ。

転入翌日、というコンディションであの点数。
それは聖の気を引かせた。

次からは少し、張り合いがでるな。

彼の眼差しには、ちょっとした驚愕とわずかな敬意が織り交ざっていた。

苦笑を浮かべていることに彼自身は気付かないまま、つい、と屋上へと繋がる階段へと顔が向けられる。



***


――もうじき日が落ちる。

世界の端がうっすらと紅色に染まり始めている。

一時間ほどここでぼんやりと時間を潰して落ち着いた頃に――と思っていたのに。


「…………。」


屋上の扉を開けたとたん、聖の足が固まった。
遠い眼差しでそこを見やる。


「ああ、風紀委員長か。どうやら考えてる事は一緒のようだな」


そこには腰まで伸ばした黒髪の、立花紫の姿があった。屋上のフェンスに寄りかかってこちらを見ている。

考えている事が一緒ということは、彼女もどうやら人混みが苦手らしい。

それについては何故だか意外さを感じた。


「…おい戻るな。なんだ、私がいると迷惑か?なら私はもう行くからあんたはここにいればいい」


さっぱりと言い放ち、迷いのない足取りですたすたとこちらへ――出口の方へと歩み寄ってくる。


…別にそういう意味ではなかった。単に、思いもよらないものが突然視界の中に飛び込んできたものだから、反射的に一歩後ずさってしまっただけだった。

彼はそれを伝えるために後ろ手で鉄製の扉を閉めた。



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