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そうしてその日迎えた放課後は、年に数回訪れる、聖にとっては煩わしいものの一つだった。

南館の掲示板前は平素の閑散ぶりからは打って変わって、群がった生徒たちが沸き上がっていることだろう。

そんな中、早々に帰途につく生徒も中にはいる。
各教科テストの採点結果を一足先に聞き出すべく、教師にすがりつく生徒も現れる。

要するに、これから数日程度の期間は教室内も校舎内も校道も、帰宅リズムの狂った生徒の姿がまんべんなく途切れない、という事だった。

人混みを嫌う聖にとって煩わしいことこの上ない。

だからほとぼりが冷めるまでの間、屋上で仮眠を取って時間を潰すことにしている。

もとより、これが発端で聖にとって屋上が一番安らぐ場となったのだった。


――ひとつだけ問題がある。

屋上に行くにはその掲示板のある通路を通らなければならず、迂回路がない。

案の定、人ひとりがやっと通れるような僅かな隙間だけを後方に残し、掲示板の前には人だかりが出来ていた。

いつもは緩やかな歩調の聖も、この時ばかりはわずかに足が速まる。


「常習犯のお出ましだわ」

「でも本当に凄いよね。どういう遺伝子を組み合わせればあんな秀才が輩出されるのかしら」


などという歯に物が詰まったような中傷や意味不明の賛辞は、この学園においては通常会話なのだった。

聖の耳にはかすりもしないレベルの会話だ。右から左に通過する。とはいえ今回ばかりはそうはいかなかった。

なぜなら、今回はちょっとした賭けを葵に無理矢理ふっかけられていたからだった。


賭けの結果を確認するため、聖は通り抜けざまに掲示板に目をやった。

まずは五位あたりに目安をつけてみたが、すぐに見つけることができた。
葵は六位 381点だった。

記憶に間違いがなければ、これまでで最高位だ。

聖の家に強引に押し掛けて勉強を教わってまで、今回の試験には本腰をいれていた努力が報われたようだ。



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