[携帯モード] [URL送信]
3


煌和学園は中高を通して基本偏差値の高い学園なので、転入生自体が珍しい。

三年間過ごしてきた中で、他校からの編入があったのは初めてのことだったと記憶している。

まあそんな事はどうでもいい事だ。
問題は……。


「立花さんも普通に中間試験受けさせられたんでしょ?転入していきなりのことで大変だったんじゃない?」


クラスの女生徒に話し掛けられた彼女は、くるりと向きを変えた。


「うん、でもあらかじめその事は聞いてたから、何とか対応できたかな」


にこっ、と微笑んでいる。
呟くようなぼそぼそとした小声はそのままだが、しかし口調が全く違う。

一通り差し障りのない会話を終えてクラスの女生徒が各々の席に戻ったのを見届けた彼女は、再び窓の外を見上げながら、


「涼しい顔して全部聞いているだろう。このむっつりスケベめ」


無表情に戻り、低い小声で再び聖に絡んでくるのだった。

完全に別人というか、明らかに聖の前でだけガラリと変貌している。

しかも周りに感付かれないように気を張る周到さで。


(…何を考えているんだ、こいつは)


先日のような、葵を経由しての名前すら把握していないような女生徒のそういう呼び出しとか、進学校特有の優等生に対する妬みとか、これまでに聖に接触してきたそういう連中とは彼女は決定的に異質だった。

そういう《変わった人》に妙な目の付けられ方をされている聖が、僅かながらの戸惑いを感じるのも無理はなかった。

別に何かした訳でもないし、というか転入早々何かする訳ないし、なぜ自分にだけ妙に絡んでくるのかがさっぱり分からない。

大体、風紀委員長うんぬんなどコミュニケーションにおいて関係のないことのように思う。

聖は、彼には珍しく、重い溜め息などを飲み下していた。



[前][次]

3/27ページ


あきゅろす。
無料HPエムペ!