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「了解。…ここからは私の主観での話をするわ。あなたの了見で答えて貰って構わない」

『了承』

「例えば私の管轄内に、B2級純粋因子を殺せるほどの力を持った未接触の能力者がいるとする。それがもし私の手に余りそうな能力者だった場合、どうするのが望ましいかしら?」


じっとりと汗の滲む手に握っていた携帯電話を持ちなおした。受話口の向こうからは暫しの沈黙と、表層世界には存在しないシステム音が流れ込んでくる。

やがて、その声は迷いのない口調でこう言った。


『幸いにも、あなたの近郊には現在オメガ様が任意派遣されているようです。彼女に後援を願ってみては?』

「最終手段ね…ご意見ありがとう。とりあえずアザレアに関する登録事項を書き換えておいて。詳細は三回に分けて1時間以内に通知するわ」


今にも漏れ出てしまいそうな嘆息を堪えながら、回線を遮断した。

(結局、どうにかするしかない、というわけね…)

最終手段は正直言ってあてにならない。

最凶兵器とも謳われるオメガは確かに最後の砦ともいえるが、しかしあれは単なる殺戮マシーンだ。

想定を逸脱した破壊行為は、管憲の力でもっても収集できるものかどうか…。



彼女――クリムゾンこと不動蛍子はれっきとした国家従者であり、勤続十数年の正真正銘の地方公務員である。

いや、持ち合わせた能力――それがあったからこそ、分類上、女という体力も腕力も劣った生物でありながら、捜査一課での先陣を切り続けられてきたのだろう。

ちなみに娘の沙凪には、官憲の顔と、世界のどこにも存在しないシステムの端末、という二つの顔を持っていることを告げていない。

騙すつもりの行為ではなかった。

終生、彼女には明るみの世界で生きていってほしい、そう願っていたからだった。

沙凪を守りきる事。
それが娘へのせめてもの罪滅ぼしになるだろうと、自らに枷を科した十二年前のあの日、心に誓ったのだから。



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