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「あなたにそういう種類の機微があるとは思ってないもの。あ、けなしてるんじゃないのよ、真剣に真実だと受けとめてるだけ」
「…誉め言葉だと受け取っておく」
「誉めてるの。…で?」
「タイムパラドックスの話だったな。確かにもっともな疑問なんだが、しかし結論から言うと過去を起因に未来を大きく変える事はできないらしい」
「ふーん」
「例え過去で何か仕出かしたとしても、そこから現在に辿り着くまでの間に『自然の復元力』のような力が働いて歪められた過去の大半が自動修正されてしまうと言っていた」
「自然復元…」
「どこか矛盾というか欠陥があるようにも思うがな」
「じゃあ、ちょっと極端な例えになるんだけど、例えば私が過去に遡ってあなたに致命傷を負わせたとしても、それでもやっぱり模試の順位を塗り替えられない、と」
「いいかげん諦めろと言いたいところだが、まあそういう事だ」
「ふーん。その人は今どこでどうしているのかしらね。ていうか、そんなハードな話を赤の他人の私にして大丈夫なの?」
「別に構わん。一応、人は選んで話したつもりだ」
「…そ、そう。……あれ?そういえばすっかり忘れてたけど、何時の間にか後悔の話じゃなくなっちゃったわね」
「…さっきの話に出てきた奴に最後に会ったのは二年前でな。しかも偶然再会したようなものだった」
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