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私は好物のアールグレイを啜りながらソファーにふかりと腰を沈ませる。

カップをテーブルに置いて一息ついた時ようやく、リビングにまで漂ってきている甘い香りに気付いて、くんくんと鼻を鳴らした。

ミルクのにおいかな?
てことは今日はシチューとみたっ。


「残念、ロールキャベツよ」

「もお、人の考えること読むのやめてよぉ」


絶妙のタイミングで割り込んできたお母さんの突っ込みに、唇を尖らせた。


「あなたは考えている事を馬鹿正直に言動に出し過ぎなのよ」


楽しげな口調でクスリと笑われてしまった。

うーん、そうなんだ。
でもそういうのって、自分じゃよく分からないんだよね。

私は少しばかり悶々としながらソファーに反り返って大きく伸びをし、ぐってりと脱力した。

今日も一日が終わったなぁ。

なんてぼんやりしながら、ずずっ…と日本茶みたく紅茶を啜っていると。

唐突にキッチンの方で携帯電話の着信音が鳴り響いた。

…太陽にほえろ。

あまりにベタな着メロに吹きそうになり、大きくのけ反らせた頭が後ろの壁にがつん、と当たる。

いたたぁ……。

声を殺して悶えていると、お母さんはエプロンのポケットから携帯電話を取り出し、キッチンの外――廊下に姿を消した。



刑事って本当に大変な仕事らしくて、今日のように早い時間に帰宅するのはすごく稀で。

帰ってきてもすぐに呼び出しがかかったりして、珈琲一杯飲む間もなく舞い戻ってしまう日も少なくない。

携帯に振り回されるのもいつもの事だし。

でも今日は出ていく様子はなかったから、呼び出しじゃないみたい。

せっかく早く帰ってきたんだもの。私が洗濯物たたんで、あとでお皿洗って…お母さんには精一杯ゆっくりして貰わなきゃ、ね。

――私はカップに半分残ったままのミルクティーをこくこくと一気に飲み下すと、すっくと立ち上がった。



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あきゅろす。
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