あなたは私を連れ出しました。
(主人公視点)
あれ以来、図書委員として遅くまで残る日は仁王と帰るようになった。
いつも校門で待っていてくれる仁王と手を繋いで帰る。それが決まりのようなものになっていた。
「律はいいなー。」
『何?』
「だって!あんなかっこいい彼氏がいるんだよ?」
彼氏?何だそれ?
意味が分からなくて顔をしかめると、目の前の友人はきょとんとした。
「仁王くんと付き合ってるんでしょ?」
ああ、そんな噂もあったな。
『噂。』
「はあ?一緒に帰ってるのに?」
きょとんとして、何で知ってるんだと目で伝える。
「何人も手を繋いで帰ってるのを目撃してるんですー。しかも、私も見ましたー。」
なるほどと思いながら窓の外を見る。
夏が近づいてきて、葉は綺麗な緑だ。
「もう!結局付き合ってるの?付き合ってないの?どっち?」
大声で私を問い詰める友人と私にクラス中の視線が集まった。他の女子が、仁王くんのことだよとこそこそ話してる。
面倒だと思いながら口を開こうとしたとき、教室の外から名前が呼ばれた。
最近聞き慣れてきた声と彼しか呼ばない呼び方。仁王か…。
「律ちゃーん?」
ナイスタイミング…いやバットタイミングか…、何て考えながら仁王の方を見ると、手招きをしていた。
席を立って仁王の方に行くと背中に友人の探るような視線がきてる気がした。
『何?』
短く聞くと、ぐっと手が引かれた。
そのまま身を任せていると、仁王は歩き出した。
「サボるぜよ。」
『は?』
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