あなたはそれを告げました。
(テニス部2年平部員視点)
仁王先輩が変だった。
どこが変かと言われれば、たくさん答えることができる。
1つめ、いつものニヤニヤした笑いがない。
2つめ、ほのぼのした雰囲気になってる。
3つめ、副部長に怒られても文句を言ってない。
いつもは猫みたいに何を考えているのか分からない、人をおちょくったように話す仁王先輩が、嬉しそうに…それこそ子犬みたいな感じに何かを考えている。
気味が悪いというか…なんというか……怖い。
「仁王、お前菓子持ってね?なんか甘い匂いがするんだけどよぃ。」
丸井先輩がそう声をかけると、仁王先輩の表情がピシッと固まった。
幸せそうなオーラを収め、目が据わって威嚇するように目を細めている。それに気付かないのが丸井先輩で、仁王先輩に話しかけている。
「あ、ポッケに飴みーっけ!その飴くれ!」
「嫌じゃ。」
珍しいことが起こった。
だって仁王先輩があの丸井先輩にくれと言われてお菓子をあげなかったことがなかったから。
「いつもはくれるじゃんかよー!」
「嫌じゃ。」
「4つもあるんだぜ?いいだろぃ?」
「嫌なもんは嫌じゃ。」
頑なに拒む仁王先輩を柳先輩や部長が面白そうに見ている。
「仁王…お前、そんなにその飴好きなのかよぃ?」
「それはないだろう。」
「柳!そうなのか?ならいいだろぃ?俺にくれよ!」
「嫌だっていっとるじゃろ!」
ついに仁王先輩がキレて怒鳴る。
丸井先輩はびっくりしたように突っ立っている。
その2人の間に入ったのが柳生先輩だった。
「丸井くん、今回は我慢してください。仁王くんにもいろいろあるんです。」
「いろ、いろ?」
「いろいろとは何だ?気になるな。仁王の新しいデータになりそうだ。」
言ってもいいですか、と柳生先輩が仁王先輩に聞くと、嫌がる仁王先輩。
「俺も気になるな!仁王、言いなよ。」
部長が口をはさむと、さすがに部長には逆らえないのか仁王先輩は俯いてぽつりと何かを言った。
「ん?聞こえないなー。仁王、もう1回言ってよ。」
「……。」
「に、お、う?」
「律ちゃんに貰ったから、ブンちゃんにはあげられん。」
それだけ言うと、仁王先輩は赤くなりながら俯いた。
…誰だよ、ペテン師とか言った奴。
仁王先輩、普通に純情な中学生だぞ?駆け引きとか絶対無理だろ。すっごい奥手なんだけど…。
てか、仁王先輩をここまでした「律ちゃん」って人がすごく気になる。
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