あなたはそれを盗みました。
(主人公視点)
"告白"という言葉は甘い響きに聞こえる。
いつかは誰かと付き合って幸せになる、女の子の夢だろう。
でも、やっぱり告白を受ける人っていうのは決まっているもんだ。所謂、人気者ってやつだ。
その人もたくさんの人と付き合うような女の敵、もしくは一生発情期でなければ、全ての告白が受け入れるわけがない。
まあ要するに私が言いたいのは、人気者に告白なんてほとんどの子が泣くのだ。
それがスポーツ少年なら尚更のこと。まあ人とスポーツを比べるのもどうかと思うが、人間には体が一つしかないのだから両立できないのなら、無いほうがマシっていうか…、まあ好きでもない人と付き合うのもどいうかと思うしね。
なんて、長々と語ったけど何故こんなことを言ってるのかと思うと、運悪く告白現場を目撃しちゃったんだよね。
目撃っていうか、鉢合わせ?
昼ご飯食べようと思って裏庭に来たら、
「好きです!」
『え?』
「え…?あ、あなた何ですか!?」
というような感じである。
もっと詳しく言うと、裏庭に来たら去年同じクラスだった仁王に女の子が告白してたってこと。
「人が告白してるのを邪魔するなんて…最低!」
『すいません。』
これで反撃しても面倒そうなので素直に謝る。
まあ確かに、告白現場を見られるってのは恥ずかしいよなー。
謝られても怒りが収まらないらしい女の子が何かを言おうとするよりも先に仁王が口を開く。
「許してやってくれんか?」
「え…、仁王くん?」
まずい、と思った。
あの言い方では仁王が私を庇っているように聞こえる。
「律も悪気があったみたいじゃないしの。」
「そ、んな…。」
女の子の顔がくしゃりと崩れる。まずい、そう思う。
仁王は私の名前、しかも下の名前で呼んだ上に、名前を呼ぶときに軽く顔を軽く緩ませる。
これでは、どこからどう見ても付き合ってるようにしか見えない。
「悪いが、告白は断らせてもらうけん。彼女、おるんじゃ。」
そう言って、私を引き寄せると顔を近づける、仁王。
バタバタと女の子が立ち去る音が聞こえた。
それでも顔を近づける仁王。鼻がくっつきそうになったとき、思いっきり仁王の顔を叩く。
不意打ちだったからか、後ろに少しよろめいて驚いたようにこちらを見てくる。
「…な!」
『勝手に彼女にするな。』
それだけ言って仁王を睨むと、コンクリートの部分の土を払ってそこに校舎にもたれるようにして座る。
胡坐をかいて、足の上で弁当を広げる。
いきなり目の前が暗くなった。仁王が目の前に立ち、そのせいで影が出来ているのがわかった。
まだいたのか、そう思って睨むようにして顔を上げた。
「隙ありじゃ。」
ふっと、唇に柔らかい感触がかすめた。
「ファーストキス?」
『まさか。』
残念、と言って仁王は小学生のように無邪気に笑って裏庭から去っていった。
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