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校舎を出るまで
 

「うあー。」


HRが終わった直後、うちの前に現れて奇声を発している蜜柑。


奇声を発したいのはうちの方だ。今日は疲れた。
蜜柑が拉致されて、ファンクラブの会長様の話を聴いて、クラスの子をなだめたのはうちだし。


『どーしたの?』

「今からテニス部に行かなくちゃいけなくなった…。」

『入部するの?』

「あ、いや…男子の方に行くから…。」

『マネージャー?』

「いや、入部しないから!」


入部しないのに男子テニス部…何故?まあ、いっか。
面倒になって帰りの支度をする。


「着いてきてよー。」

『なんで?』

「1人は嫌だからー。」

『双子で行けよ。』

「檸檬ちゃん?先に行ってるー。」

『一緒に行けよ。』


蜜柑の言ってることにつっこむ。
悲しそうな顔をしてる蜜柑を見て、ため息をつく。


『校舎を出るまでだったらいいよ?』

「やったー!」


言った直後に笑顔になって、るんるんで準備を始める蜜柑。

何でうち?他の子誘えよー。
とか思いつつ、でも断れない自分を呪う。


「準備できた!行こう!」

『あいー。』

「何?その気の抜けた返事は!」


騒ぎ出す蜜柑を放置して歩き出すと、それについてくる。


「遊ちゃん!」

『何?』

「呼んだだけー!」

『うぜー。』

「酷っ!」


蜜柑はショックを受けたような顔をした後、すぐに笑う。


「なんか、打ち解けたね!」

『あー、そうだね。』

「うふふ。」

『きもい…あ、気色悪い。』

「意味変わんないから、それ!」


まさか突っ込みもできたなんて…。
蜜柑のこと馬鹿にしすぎてたかもなー。蜜柑、ごめん。


『よし、ここまで。』


下駄箱まで来て、蜜柑を振り返る。


「えー。」

『ばいばい、また明日。』

「うー…。」


…蜜柑が雨の日に見つけた捨て猫に見える。

雨の日ってずるい。雨で濡れてるから泣いてるように見えるから、猫が。


『じゃーね、また明日!』

「うん…ばいばい。」


靴を履いて、校門まで歩く。


「遅い!」


遠くで蜜柑が叫んだ声が聴こえた。

遅いって何?というか…声でかすぎ。


校舎を出るまで
→今日はいろいろありすぎて疲れた。

 

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