泣き言
「遊やああああ!」
『金ちゃん、久しぶり。』
「おん!」
久しぶりに従兄弟と再会。
小さな体でギュッと抱きついてくる姿は可愛らしい。
『元気にしてた?』
「当たり前や!」
『だね、金ちゃんだし。』
そう言ってにっこり笑うと、うちの体にまわしてる金ちゃんの腕の力が強くなる。顔をうちの体にすりよせてくる。
痛い…、すごい痛いんですけど…。
「負けた…。」
『ん?』
「全国大会な、準決勝で負けたんや…。」
腕の力が緩まって、泣きそうな声が聞こえてくる。
あれ?またこのパターン?春も負けたって言ってなかったけ?
ぼーっと幼馴染の春のことを考えていると、金ちゃんの腕の力が戻ってきた。
「……。」
泣き出しそうな顔をしてうちを見上げてくる金ちゃん。涙を目にいっぱいためてうちの顔を見てくる。
こんなに泣きそうになっちゃって…、なんて母親みたいな心情で金ちゃんの頭を撫でた。
ふにゃり、と金ちゃんの顔が歪んで、大粒の涙が金ちゃんの頬をつたう。
泣き続ける金ちゃんの頭を優しく撫でていると泣き声が小さくなって、金ちゃんの体から力が抜けてくたりとした。
え、ちょ…どーすんの、これ?なんて思っていると、金ちゃんママが来た。
「泣き疲れたんやねー。まーさーなー、ちょっと来てやー。」
「どしたん?」
「金太郎運んでいっといてや。」
「了解。」
金ちゃんママ、てか金ちゃんと雅くんのお母さんは雅くんを呼んで、金ちゃんを雅くんに運ばせていった。
「昔から遊ちゃんの前でしか金太郎は泣かへんなー。」
『あははー。』
「今回の大会で負けても、笑顔で家に帰ってきよるんやで?」
『へー…、笑顔で?』
「そ、遊ちゃんの前でしか泣き言言わへんのんやで?」
そう言って笑いながら金ちゃんと雅くんのお母さんは台所へ、ご飯作らな!と言いながら駆け込んでいった。
泣き言
→いつも笑顔の金ちゃんもうちの前では泣き虫。
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