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ある少女の呆れ
 


柳生くんが去っていくと、名張マリアは奥の誰も行かないような本棚の向こうへと姿を消した。
ぼーっとしていた私も、ハッとして彼女を追いかける。


彼女に追いつくと、そこは図書室にある机が1つ置いてある日当たりのいい場所だった。
ここいいな、また今度来よう。そう思いながらその場所にいる彼女を本棚の間から盗み見る。


「やっぱり。」


彼女はそう呟いて、くすくす笑った。
その笑いが彼女に合っていて、とても綺麗で、神秘的なようで、食い入るように彼女を見つめる。
自分が彼女に惹き込まれるのを感じた。


「やっぱり私はヒロインなのよ!屋上に行けば仁王と会ったし、購買ではジャッカルとぶつかったし!今日は柳生と会った!」


何でテニス部?何故彼女の口からテニス部のことが出るの?何で?自分の中で違和感が生まれる。
彼女がテニス部のことを嬉しそうに言ったから、私はテニス部に嫉妬してる。…何で?

すっと、自分が冷めていくのが分かった。
よく分からないけど、紀伊くんや信者達が陥ったものに自分も陥ったのだろう。
理由もなく、彼女に惹かれた。何て馬鹿馬鹿しい。でも、それは事実。


「明日はブン太かな?赤也かな?柳かな?真田かな?ふふ、楽しみ!」


次々出てくるテニス部レギュラーの名前。もう嫉妬なんてものはなかった。



ああ、馬鹿げてる。


 


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