003
「人が多いよ…。」
「まあ、池袋だしね。」
「だよね。」
卒業式の翌日、私と香苗は池袋に足を踏み入れた。
人に酔いそうになりながら今日からの住居に向かう。
「部屋隣だ!」
「安心だからじゃないの?」
自分の素直な反応に冷めた言葉を返す香苗に少し落ち込みながらそれぞれの部屋のドアを開けた。
「綺麗ですなー。」
「建ったばっかだからね」
香苗、やけに冷静だなー。
そんなことを思いながら自分の部屋に入った。
「ダンボールばっかだ…。」
そんな当たり前のことを言いながら、大きな通りに面した窓を開ける。
「絶対にせっちゃんを見つけてみせるぞ!」
決意したように外に向かって叫んだ。
大丈夫かなこいつ、なんて私の隣の部屋の窓からその様子を見ていた香苗が、これから私が池袋で生活していくことをとても心配していたことなんて知らなかった。
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