焦燥 3 「少し場を変えないか」 「ああ、構いませんよ」 そう言って立ち上がり、ロンナは私の手を握って誘導した。ロンナは本当に私と同世代なんだろうか。小さな姿をよくよく見た。 身長だけでは判断できず、オトナの人たちをすり抜けて……大階段を流れるように登って、ロンナに身をまかせた。 「どこ行くの?」 「もうちょっと、待ってくれ」 階段を登れば、誰もいない廊下。 一本道がそのまま一直線に通っている。 のらりくらりと歩いて、目の前は門のような扉がある。 「ここだ。極秘であり特別な場でもある」 「……ここは、何ですか?」 門の扉に手をかけ、笑うロンナの顔は廊下に置いてあるたいまつで、燃えるような表情をしていた。 「まあ、入るが良い」 「分かりましたわ」 門の扉を計り知れない力で開け、手をそっと引っ張り、優しくその中へ導いた。 シャンデリアと綺麗な装飾のセット。どこから手に入れたかさえ分からない謎の調度品。 「ココロナ。まだ貴女の夢は醒めない。私とどうかお戯れを……」 「え……っと?」 「私と、踊っていただけませんか?」 ひざまずいて、胸に手を当て、にっこりと笑うロンナ。いわゆる社交ダンスなのだろうか。 私は、踊ったことさえない。 首を横に振った。きっと上手じゃないから。 「いえ……踊ったことさえないので、やめておきます」 「構わない。またさっきのように身を任せてくれ。私はココロナより小さいが、問題は無さそうだ」 身を任せるからって、さっきのような浮く感覚とかイヤだ。また呪縛とか、訳の分からないことをまた言うのかしら? 「……少し、心の準備を。よろしくて……」 「構わないが。どこへ行く?」 「すこし空気を吸いたいの、構わないかしら……」 はあ、とため息をつき、どこかどこやら分からないまま、移動する。 「まて。私も行こう」 「ロンナ。ちょっと一人にさせてほしいの」 「そうか……あの、出来るだけ両親の連れに見つかりたくないのだが……」 少し泣きそうなロンナ。それをまた、誘うかのように。 つられてしまう。このよく分からない舞踏会に誘われ、あらがえない。今日が永遠の夜のように感じてしまう……。 このまま明けない夜なら、どうしよう。 [*前へ][次へ#] |