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焦燥

ロンナの足は速くなり、私と遊ぶのを楽しんでいるよう。

「シャンパンが飲みたい!」

 ロンナはいきなり明るくなり、舞踏会場に戻ったが、誰もいなかった。もう終わりなのかと思ったが、ディナーはそのまんまぽつりと置かれていた。

「あれ……?」

 困る私はあたりを見渡す。上のエントランスも、誰もいない。富豪達も……。

「先ほどの呪縛の調べでほぼ消えてしまったようだな。人が」

 かなり強い声のトーン。しゅわしゅわと響くシャンパンの泡の音。それをぐいぐい飲み干す。ああ美味いと女を捨てたような声で飲んでいた。

「消えてくれたって構わないのだ。別にこちら側に支障はない」

「はっ、はあ……?」

さすがにこれは困惑してしまう。ロンナは豹変してしまったか……?

「ココロナ。ここから逃げることなど絶対出来やしない」

「え?」

「楽しい舞踏会に、いざなわれたんだ。君は。だからね、逃げることなど出来ない……」

目は血走っているようで、落ち着きがない。
ピッコロを取り出し、乱暴に吹き始めた。

「いっ……いや……だれか……」

呼んでも反応はない。誰もいないのに、助けを求めるなど無意味なことをしてしまうのは何故……?

「誰もいない中で助けを求めるなど馬鹿な!」

綺麗にすら至らぬ音色を乱暴に奏でる。私は目を閉じ、お父様に教えていただいた結界を作った。

超能力を生まれつきでお持ちのようだ。
決して、見せつけるように使ってはいけないぞと。

「……ロンナ!」

乱暴な音色に鼓膜は不快を感じているが、そんなことはどうでも良い。素早い足でピッコロを奪い、放り投げた。

「ココロナ?」

放り投げたピッコロ。私は少し判断を誤った。

「あなたは何を考えていらっしゃるの?あなたは何をしているの……?」

「分からない……分からない……まるで、精神が千切れるような感覚に陥るかのような。あぁ!」

ピッコロに近づくロンナを蹴落とし、私はピッコロを持った。情緒不安定なロンナに精神安定の音を。

ピッコロは吹いたことさえない。分からないが、良い音を手探りで探している状態だ。

「……どうか。ロンナを!楽しい舞踏会に導いて!まだこの時を終わらせたくない!」

そう祈る、ココロナ。

そう願うのもロンナも同じなはず。
情緒不安定な心でも……。

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あきゅろす。
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