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焦燥

「ロンナ、あなたにひとつ聞きたいことがあるわ」

「何だ?」

「貴女は、どこで成長しているの。さっきのキスといい……読み書きが出来るほどの教育はなさっているの?」

あのキスは、夜伽としてこの前教えられた。
私は、高度教育を受けているけど、ロンナはどんな世界にいるの?

「男と女の喧騒がある世界に住んでいる。ようするに治安も悪く、売春世界だ。読み書きができるほどの教育はそれなりにしているから安心してくれ」

売春世界なら、彼女は体を売っている。
そんな、恐ろしい世界に彼女は居たのか。

「分かったわ……でも、ロンナ。そんな世界に居て怖くない?大丈夫?私のおうちに来ない?」

「こういう世界に居るのも怖い。それは本音だ。こんな世界にしたのも何故と問いたいほどだ。でも、政略から逃げている以上、こういう身になるのは覚悟の上だ」

病んでしまいそうな彼女の世界。高度な技術を編み出しつつも安泰な日々を過ごす私の世界とはかなりズレている。

「逃げたくてたまらない。この夢のような舞踏会が終わったら、どうしよう……」

「本当だわ。私の場合ならこの舞踏会が終わった後に死ぬわ」

「私も死ぬかもしれない。だけどまだ生きようとする気持ちもわずかにあるのだ」

売春こそ彼女の使命というなら、この世界は腐っている。逃げさせたい。私のおうちに逃げさせたい。

でも……こんな自分勝手な世界、この意志は許される?黙れと言われ、ねじ伏せられる?

「……生きていくしかない。暗い話はここで切らせていただこう。さあ楽しもうではないか」

手をひっぱり、走るロンナに私は呼び掛ける。

「ロンナ……」

切なげに呼んだ名前に振り返ることなく、楽しげな彼女にどこかで安心していた。

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あきゅろす。
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