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焦燥

「少し場を変えないか」

「ああ、構いませんよ」

 そう言って立ち上がり、ロンナは私の手を握って誘導した。ロンナは本当に私と同世代なんだろうか。小さな姿をよくよく見た。

 身長だけでは判断できず、オトナの人たちをすり抜けて……大階段を流れるように登って、ロンナに身をまかせた。

「どこ行くの?」

「もうちょっと、待ってくれ」

 階段を登れば、誰もいない廊下。
一本道がそのまま一直線に通っている。

のらりくらりと歩いて、目の前は門のような扉がある。

「ここだ。極秘であり特別な場でもある」

「……ここは、何ですか?」

門の扉に手をかけ、笑うロンナの顔は廊下に置いてあるたいまつで、燃えるような表情をしていた。

「まあ、入るが良い」

「分かりましたわ」

門の扉を計り知れない力で開け、手をそっと引っ張り、優しくその中へ導いた。

シャンデリアと綺麗な装飾のセット。どこから手に入れたかさえ分からない謎の調度品。

「ココロナ。まだ貴女の夢は醒めない。私とどうかお戯れを……」

「え……っと?」

「私と、踊っていただけませんか?」

ひざまずいて、胸に手を当て、にっこりと笑うロンナ。いわゆる社交ダンスなのだろうか。

私は、踊ったことさえない。
首を横に振った。きっと上手じゃないから。

「いえ……踊ったことさえないので、やめておきます」

「構わない。またさっきのように身を任せてくれ。私はココロナより小さいが、問題は無さそうだ」

身を任せるからって、さっきのような浮く感覚とかイヤだ。また呪縛とか、訳の分からないことをまた言うのかしら?

「……少し、心の準備を。よろしくて……」

「構わないが。どこへ行く?」

「すこし空気を吸いたいの、構わないかしら……」

はあ、とため息をつき、どこかどこやら分からないまま、移動する。

「まて。私も行こう」

「ロンナ。ちょっと一人にさせてほしいの」

「そうか……あの、出来るだけ両親の連れに見つかりたくないのだが……」

少し泣きそうなロンナ。それをまた、誘うかのように。

つられてしまう。このよく分からない舞踏会に誘われ、あらがえない。今日が永遠の夜のように感じてしまう……。

このまま明けない夜なら、どうしよう。

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