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焦燥

 ここは深い深い夢の中、天井のシャンデリアが
妖しく輝き、とても綺麗な場所。今日は舞踏会が行われています。

「……ほほ。可愛らしいお嬢さんではないか」

テーブルに置かれたディナーをいただこうかと思った瞬間、声をかけられた。容姿はとても可愛らしく、濃い茶色の髪色で眼はピンク色だ。

「何ですか?」

「私と良かったら、遊ばないか?」

藍色のシフォンドレスを揺らし、手は自分の腰に置き、偉そうなポーズで私を見てきた。

きっと、ひとりぼっちのための処置か何かであろう。

「結構です。お断りします」

「まあ、待て待て」

断った瞬間、即答した。面倒ごとには巻き込まれたくない。そう思ったのに……。

「名前はなんと言うんだい」

「ココロナ……です」

「そうか。異国の容姿をしているね。私はロンナだ」

ふふ、とほほえむロンナは何者なんだと、問いたいくらいだが。話しかけてくれるのって結構貴重だから、実はちょっとうれしい。

 名前を聞いた後、ロンナは何も喋らない。あれ?とちょっと思ったが。なにやらロンナは考え事をしているようだ。

「ココロナ」

「へっ?」

明らかに考え事してますという表情なのに、ロンナはいきなり私の名前を呼んだ。

「遊ぼうか」

ロンナは私の手を握り、舞踏会場を抜けていった。入ったのは、まったく見慣れない部屋だった。

ミラーボールがころころ動き、妖しい明かりを出しているこの一室。この一室で何をするのだろう。

「この雰囲気には合わないが、実はピッコロ吹きなのだよ。小さいながらも綺麗な音色を出す優れものだ」

ピッコロ吹きかあ。

楽器なんて無縁だから、名前を聞いたのはひさしぶりだ。シナプスが発動したかのように記憶を呼び覚ました。

「ココロナ。聴いてくれないかい。こんなコンサートじゃないような場所でとても申し訳ないが」

「初対面の……私でも、問題ないですか?」

「ぜんぜん構わないさ」

 ロンナは優しく眼を閉じ、扉の前で戸惑うような顔をする私の両手首を握りしめたのであった。

「初対面ではあれど、私は貴女に興味を持った」

 かしこまったかのように言うロンナは、大人びた感じ。ワンランクの女性ではないか。と想像している。

ああ、可憐な方なのかと、可憐で花と散るといってもおかしくない、そんな情景が思い浮かぶ。

「……私は貴女の感性が生き生きしていると。そう感じているさ。そこに座ってくれるかい」

ロンナが指をさしたのは、真ん中にあるソファ。
ミラーボールが動いているため、真っ暗で色の判断が出来ない。

「はい……」

少しどきどきした、私。



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あきゅろす。
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