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より一層、遠い昔がますます離れていく気がしたけど、過去にあたしは囚われる暇はない。
あたしもあたしで、恋をしたからだ。
「おーい、西野!」
学校から帰宅途中。
少し声のトーンが1つ下がり、より男らしくなったあの川本に突然後ろから呼び止められた。
今まで川本と話す機会が少なかったもんだから、その声でいざ話しかけられるとドキッと心臓が大きく動揺したのがわかる。
一生懸命平然を装った。
「な、なんだよ川本」
「お前さぁ、委員会さ今日集まりあるの忘れてただろ」
「……え」
「俺センコウにおもいっきし叱られたんだぜ?西野に伝えてないのかお前は!!って」
「うわぁ……す、すまん!!」
「俺ちゃんと伝達したっつーのに、あ〜あ」
「うわああ!ご、ごめんって、川本!!」
川本はむっすーと拗ねている。
なんか可愛いなぁと思いつつ、その機嫌を直してもらおうと謝り続けた。
川本は小学校からの馴染みで最初は奴なんか眼中になかった。
ただ女々しくて、変に優等生っぽくって、奴の言葉には説得力があるからすぐに皆は川本に魅せられてしまって、それがまた、あたしは気に入らないと思っていた。
でも今はなんだか目が離せない、そんな風に変わった。
本当になんでだろう?
あんなにも関わりたくないって思っていたのに。
そんなやつにまさか惹かれてしまったなんて…
昔の自分なら舌を出してうえ〜と今の自分を蔑むかもしれない。
でもどうしても視線は川本に釘付けだった。
「ジュース一本奢れよ。じゃなきゃ俺は恨み続けるぞ!」
「わかったわかった!奢るってジュース!」
「よっしゃ、なら今回の事はチャラにするよ」
ジュース一本奢るくらいで許してくれるなんて、川本ってかわいいなぁ。
なんてくすくす笑いながら思った。
「その顔っ!!」
「え?」
「今の顔だよ!!今の西野の顔!」
「………はい?」
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