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あたしはその当時亮の事を亮兄と呼ぶほど慕っていたから、その日も学校帰り一緒に帰りたくて中学に立ち寄った。


亮の中学はあたしが通ってた小学校から行ける短い距離だったから、よく一緒に帰ってもらってた。



でも
その日だけは。



行かなきゃよかったと、今も後悔している。






亮兄まだかなぁ…。

鐘なったからもうそろそろ下駄箱に降りてきてもおかしくないんだけどな。



すると丁度よく、スタスタ階段を降りてくるあの聞きなれた足音がした。




亮兄が来たっ!



と喜ぶのも束の間。


その足音は止まる。



「榊原君!」


優しそうな声が亮を呼び止めたのだ。


「ん、森田さん。なに?」

「今一人で帰るの?」


顔はわからないけど、声色からしてあたしなんかと比べ物にならない可愛さと、気品さを持ち合わせた人なんだと読み取れた。


「……ああ。」




亮は短く答えると、再び階段を降りようとした。




「あのさ」


「ん?」


「実はね」


次の言葉はもうわかった。



きっとこの女子は亮の事を意識してるんだなってその震える声で簡単にわかった。




「私榊原君のこと、前から好きだったんだ…」

「…………」




亮は再び足を止めた。




「迷惑……だよね」

「………なんで?」

「だって榊原君は彼女さんがいる……から」

「いないよ」

「え?」

「言っとくけど彼女なんて俺にはいないよ?」

「……本当?」

「こんな変なタイミングで嘘なんかつくかよ。」



亮の小さな笑いが聞こえる。


でも下駄箱の隅で亮を待っていたあたしはなんだか逃げたしたくなった。


聞いていたくなかった。





恋愛なんて、亮にはいらない。



あたしの大切な兄さんだから、あたしと遊んでほしいの!



あたし、亮と遊べないなんて嫌だ。



だって恋愛は、


あたしと遊んでくれる機会を減らしていくんだろっ!



「そっか。じゃあさ、……私、期待してもいいのかな??」

「……いいんじゃね?」



なんとなく程度に答えたつもりかもしれない、でもその亮の言葉にあたしは急いで正面口の扉を開けて飛び出していった。

だって、きっと亮はあたしなんかとは遊んでくれない。


幼いながらにしてこの衝撃は大きかった。


小学生でも恋愛とかあって、


「〇〇君の事私好きなのっ」

「私もっ!」


と取り合ったり、同盟組んだりで盛んだけど。

中学はもっと上で、一度恋人になったらその関係は続くもんだって思っていたから。


亮が次元の違うその大人の恋愛に進めば必ずあたしは置いてきぼりだ。



そんなの、
認めたくなんかないっ!



歯を食い縛ってあたしは一人帰り道を走った。



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