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いや、
今日こそはちゃんと言おう。


ちゃんと川本に伝えよう。







―――あたしの気持ちを。








「あたし、川本が前からっ」


「――――遅い」


「………え?」






余りにあたしが躊躇していたせいか、川本が痺れを切らして「もういい。」と言われたのかと思った。



そのせいで一瞬心臓が止まりかけた気がした。



でもその声色は川本ではなく、昔毎日の様に聞いた、懐かしい奴の声だった。



再びあたしの時間が止まる。







そんな……。







なんで、
またあたしの前にお前は現れるの?





なんでまた……





奴を見つけて、なんとも言えない感情が溢れ出てくる。



「………お前…なんで、いんの?」



あたしの家の玄関前に亮が無愛想な顔で門に寄りかかるように立っている。


久々過ぎて顔すらもう忘れていたつもりだけど、綺麗な顔立ちのまま前よりずっと大人びているだけですぐにわかった。


あたしはわかってしまった。


通り過ぎる人の視線を釘付けにしてしまうほど、他の人には持ち得ない魅力のオーラを秘めているというのに、

それを覆すが如く、亮は
いつになく偉そうな傲慢な顔で人を見下す様に視線を飛ばした。

川本は顔立ちとその振る舞いのギャップに驚いてピクリとも動かなかった。



「別に、用があって来たんだ。お前の家にな。」

「……なんの用だよ。」

「それはこれからまとめて話す。だからさっさと家に入れ、馬鹿者」

「じゃ、……邪魔すんなよ!!お前本当に最低な奴だな!」

「は?俺がなんの邪魔したって?」




そう言って鼻で笑われた。




ああ、ホントにこいつは噂通り最低な人間に成り下がったんだな。



思わず拳に力が入る。



あたしの不服そうな顔を満足そうに眺めてる亮へそのまま一発パンチをお見舞いしてやりたかったが、西野の前で乱暴な素振りは出来なかった。




乱暴な女と見られたくない。



「あー……えっと、じゃあ、西野。
また、明日…な?」

「あ、わ、悪いな!次はちゃんと委員会でるよ!ついでにジュースも買っとく」



さっきとはまるで意味の変わったぎくしゃくな会話でであたしと川本は別れた。
亮のせいで、あのドキドキ感を忘れさせてくれる程のあっさりなお別れだった。



ああ、

もう最悪だっっ!!!

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