雪、合戦
「うわぁ・・・寒い」
首をすくめて、両手に息を吹きかける。
ほんの少し温かくなってまた冷たくなる。
「中禅寺さんてば寒くないんですか?」
「・・・・炬燵に入っているからね。それより閉めてくれないか?寒い」
「やっぱり寒いんじゃないですか」
「・・・・君は元気だね」
「何でですか寒いですよ、元気ですけど」
会話がかみ合っていない気がする。
別に意図的にやっているわけではなくて、中禅寺さんが予想外の返答をするから悪い。
私が思っている通りの返答をすればもっと会話は弾むはずなのに。
どうもこの人はいつも私を困らせようとする。
「寒い」
「いい大人が何言ってるんですか」
「名前も一応大人だろう、子供みたいにはしゃぐなよ」
「だって、だってだって!!」
「子供子供、全くもって子供だ」
「こんなにキレイなのに、めったにないですよ!?」
「たかが雪だろう。子供ほど雪ではしゃぐものだぜ」
朝から雪が降っていた。
今は昼時で温かいのだけれど、それでも雪は溶けずに積もってきていた。
走ってここまで出向いて、私はずっとこの調子だった。
何をするでもなく冷気を迎え入れている私に中禅寺さんは呆れているようだ。
「そうだ、中禅寺さんも楽しくしてあげますよ!」
「遠慮しとくよ」
「遠慮なんてしないでくださいねー」
「だから」
「よいしょー」
縁側から飛び降りる。
中庭にはくるぶし少上まで雪が積もっていて、今も燦々と降り続いている。
雪をそっと両手で掬う。
体温で溶けそうになったけど、一生懸命固めて雪球を作った。
何をしているんだい、と中禅寺さんが座敷から問いかけてくる。
今だとばかりにその顔めがけて雪球を投げつけてやった。
「っぶ」
「あははは!!やーい、当たった当たったー!」
「名前・・・・」
怒りに顔を歪ませて、口端が目茶苦茶吊り上っていた。
流石にやばいと感じて第二手を作る。
「もう許さん!!」
「びゃぁぁああッ!」
ボグリ
草の上に積もった柔らかい雪の上に倒れる。
否、中禅寺に倒されたのであった。
「ちゅーう禅、じさん・・・?」
「おいたが過ぎる子供にはお仕置きだ」
「ぃええ、あの雪が冷たくてあのおどきになってぇぇ!!」
あまりの顔の近さに心臓が高鳴ったが、そのまま馬乗りされて雪を口の中に詰められた。
ふがふがしていると、上から中禅寺さんが笑いかけてくる。
「雪は冷たいね」
「ふが、ふぐ・・・あ、飲んじゃった」
「これだけ綺麗な雪だ、美味かったか?」
でも飲むべきではなかったね。と言いたいんだね?
相変わらず頭にくる言葉を言う。
上半身を起こせないでいると中禅寺が手を引いてくれる。
「さぁ、中に入ろう」
「・・・・はい」
(名残惜しそうに上を見上げるあなたの息がとても白かった)
(何でだろう息をしていることが嬉しかった)
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